« モンドセレクション | メイン | 取材日々、是好日 »

2007年05月10日

●バレエ考

今日の道新の朝刊に、札幌出身の漫画家・山岸涼子さんの
『舞姫テレプシコーラ』が「手塚治虫文化賞」大賞に
選ばれた、と掲載されていた。
それは、バレリーナの物語であった。

バレー 3.jpg
(「MIYAKO 英国ロイヤルバレエ団の至宝・吉田都の軌跡 」
吉田都/著 宮沢優子/写真 ビル・クーパー/写真 文芸春秋)


そう言えば、先日京都の帰り、
電車乗り換えの札幌駅の待合室で
放映されているTV番組にしばし見入っていた。
それは「吉田都」さんという英国ロイヤル・バレエ団で、
12年間もプリンシパル(主役)で居続けた天才バレリーナの対談だった。
彼女の姿態と語り口から、凄まじい人生の舞台を踏んで来た自信に溢れ、
若いながら風格さえ漂っていた。

世界一ともいえるバレエ団の舞台裏は、
まさに熾烈なる戦場である。
いかに自ら這い上がるか、いかに他を蹴落とすかの修羅場で、
毎日が、戦い以外の何物でもなかった。
しかし、彼女は他と違った。
矛先を決して他に向ける事無く、
ひたすら内面に向けて進んで行った。
諸外国から精鋭が集まり、火花を散らす中、
ただ一人静かに己の内に
烈火の如き情熱の炎を燃やし続けた。
それは、皆から見れば、控えめで、おとなしく、
万事争うことなく、自己主張という欠けらさえなかった。
実は、これが長くプリンシパルを維持出来た秘訣でもあった。
そこに、何処の国にもない日本人特有の謙虚さの徳性が、
皆の心に響き、信頼を勝ち取って行ったのだった。
いわば、虚の心が、実の心を吸い込んだのだった。
これが彼女の魅力となって、次々と
世界のひのき舞台の主役に抜擢されていったのだ。
そして、最近、あの熊川哲也氏率いるK-バレエカンパニーに入団して
母国の後輩達に、バレエの真髄を伝えようとしている。

バレー 2.jpg
(《小林絹恵の肖像-バレリーナ》武井満寿美さん)

その時思い出したのが、小林絹恵ちゃんのことだった。
バイオ農業研究会の前北海道支部長だった小林繁範さんのお嬢さんで、
バレエを幼い頃から習っていることを聞いていた。
しかし、あれよあれよという間に成長して
全道バレエフェステバルで「ロミオとジュリエット」や「白鳥の湖」の主役を
厚生年金会館で踊った時には、
スゴイ子が身近に出たものだと驚嘆してしまった。
小林さんと会う度に絹恵ちゃんの近況を聞いていた。
しかし、当のお父さんは、バレエには大反対で、
何時も本気で「やめてしまえ!」と怒鳴っていたという。
それは、バレエでは、到底食べられない現実を知っての親心からだった。
周りの友達は、皆親御さんに車で送迎してもらうのに、
彼女は幼稚園の時から一人で一時間もかかる市内の教室に通い続けて居た。
お父さんから叱責される度に、眼に涙を溜めて、
それでも決してへこたれる事がなかった。
とにかくバレエが心底大好きだったのだ。
東京にも、本場の外国にも行かせてくれない。
周りには留学する子も居る。
コンクールに出る子も居る。
しかし、絹恵ちゃんは生来の明るさで、決してめげずに
その場、その時に与えられた役を最大限一生懸命勤めて来た。
そして、ついに彼女は、熊哲さんの眼に留まり、
その力量と天性が認められて、
何とK-バレエカンパニーに入団し、ソリストとして
今なお、踊り続けているのだ。
http://www.k-ballet.co.jp/index_02.html


思い出す。
お父さんが言っていた、「あの子は、誰からも愛される子だった」と。
他の教室の先生からも、他の生徒さんからも、好かれていた。
皆から「絹恵ちゃん、絹恵ちゃん」と慕われた。
その性格は、表の華々しさと打って変わって、
素直で、謙遜で、何事にも明るく振舞い、
周りを楽しく幸せにさせるのだった。

吉田都さんといい、絹恵ちゃんといい、
生来の性格の良さが、
彼女達の運命を拓いて来たように思うのだ。

このような若い女性の
芯の強さ、心のたおやかさは、
どんな世界においても、
人を惹きつけて止まないのだろう。

その生き方の見事さに感嘆し、
年齢の差を越えて、
見習うべき所の如何に
多いかを学ぶ。


バレー 1.jpg
(シルヴィ・ギエム「最後のボレロ」から)

私が「ボレロ」を観に行ったり、
ビデオまで買って見た「百年に一度の天才」、
あの不世出のシルヴィ・ギエムの超絶的技巧と、
そして、その厳しい自己管理の凄さに驚嘆した。
森下洋子さんも還暦近く、
第一線で、今なお踊り続けている。
その鬼気迫る形相に、人生の姿勢を問われた。

毎日毎日、舞台で踊り続ける、
一瞬の油断も許されない、
その真剣な生き方に、私は
両の頬を打たれたかのような思いだ。

天職を舞うことの
美しさ、厳しさ、そして
ひたすら求道する姿に、
「もう一度、青春を」と思わせる
清々しい風が吹くのと
少しばかりの羨ましさを覚えた。

コメント

タイムリーなブログをありがとうございます。

日常生活が絵に描いたような展開となっております。

奇異な例えとなりますが

まるで太極拳の達人に吹っ飛ばされているようです(笑)。

抵抗も受け身も取れないといいますか・・・。

あらゆる物事が一つの大きな波となって

私を天職へと運び去ろうとしているようです。

遅ればせながら私にも人生の転機が近づいているのですね。

まだ準備不足と逃げていたいのですが・・・。

戴いたTO・HENの名前、ドメインを取得しておきました。

完璧に名前負けで気が重くもありますが

お尻を押してもらいながら踏み出してみます。

ネパールへのご旅行、

皆様にとって素敵な一時となればいいですね。

社長のお話を楽しみに待っております。

(出来ればおみやげも^^;)

バレリーナは本当に素敵・・・。昔はバレリーナを夢見て踊っていたときもあったのだと思い出し笑いしました。最近、オバちゃんバレリーナしている友人が増えました。やっぱり自己鍛錬の賜物らしく、贅肉ならず筋肉をつけていて、すてきです。自分に甘い私などはとても無理なところです。最近はフィットネスクラブに入り、少しエクソサイズを始めました。体は正直で、潤滑油が入ったような感じです。

内面に向かうことの大切さをひしひしと感じるこのごろです。
素敵なものを読ませていただき有難うございます。

是非とも楓子さんのタイツ姿を見てみたいものですね。まだまだお若いので、諦めないで下さい。当社にも、中年真っ只中で、バレーに励んでいる若き女性がおります。やはり動きがシャープですね。私も始めようかな。そういえば糸川大先生もやっていらっしゃいましたね。
まだまだ、遅くないぞ・・・・・・・・

コメントする