●降神のムックリ
5日(土)に、地下洞「無限心庵」にて、
長根あきさんによるムックリと語りの会が行われた。
彼女は、千歳の出身で、36号線の恵庭側で生まれたとか。
だから、私と同じ空気、空、山を見て育った訳だ。
小さい頃、支笏湖のアイヌ民話を聞いて、
「これだ!!」と閃くものがあったという。
それは、北海道に生まれて、
「かぐや姫」でも「桃太郎」でもない私のものがあるはずだ、
と思っていたという。
当夜の灯火に照らされる彼女に浮かぶ面影は、
イヌイットやモンゴルや北方民族のそれで、
遠き時代から舞い降りたような感じであった。
「これが、シャーマン、巫女なのか!」
と思われるほど、習ったもの、教わったものでない、
彼女の底から発する独自の霊気が漂っていた。
アイヌ語で語ること、トンコリで弾くこと、ムックリを奏すこと、
静かで、内省的な響きの中に、
実存性を問うものがあった。
あたかもチセ(家)の中で、老婆が語るユーカラを
子供達が聞くような、そんな錯覚を覚える。
演奏の技術などより、驚くのは、
一体になれる彼女の老成した存在感かもしれない。
小さい頃から、近所のアイヌのおばあさんからアイヌ語を
習っていたということも、単なる趣味ではない血の蠢きを感じた。
祖父母に、東北のアイヌ、津軽エミシの血が、あったのかも知れない、と語っていた。
先日の沖さんのエレキトンコリとは全く対極にある、それは静かなトンコリ。
そのかそけき響きが心に沁みた。
実は、三味線の絹糸を用いているとか。
今は、みなナイロン弦、スチール弦を用いるようになって、
音の安定化・拡大化になっているという。
糸を昔のイラクサの繊維や鹿の腱に戻すまでもなく、
そのささやかな天然弦の音色に、
むしろアイヌの繊細な音調の深さを聞いた思いだった。
そして、彼女の奏でるムックリの複雑な音色と響き。
口腔の中は無論、気管や肺、副鼻腔などの体内空間を使って
同時に幾つかの倍音を発生させ、
異なる周波数が遠近に響いて幻想的な音色を醸す。
ムックリは単純な楽器ではなかった。
それは自然界の精霊、神々の交霊を呼び起こす
聖なる楽器であったに違いない。
今回の「折々の書」にも書いたが、
火の洗礼、火の儀式が要る、との件があったが、
当の長根さんも、火のキーワードを感じて、
火の空間から反応があったということだ。
やはり、時空を越えてシンクロするものかと、
その感能力に感心した。
何時か、またこの会を催す時は、是非参加されたい。
当夜、いろいろなサミットのイヴェントがあり、
参加者が少なかったのが残念であった。
東京朝日新聞社の山田記者も取材され、
10月に、全国紙の夕刊に掲載されるという。
コメント
無限心庵に響くその音 長根あきさんの音の時
。。。どんな不思議な音だったのか、どんな不思議な空気がながれたのか、
聞き逃したなぁ 見逃したなぁ と思いました。
また是非機会をつくってくださいね。
アイヌのアーチストたちを 北海道民の私たちがまず支えてあげたいですね。
少人数で囲む 空間の 和やかさ♪
Posted by: 蓮の音 | 2008年07月08日 14:13