●旨し珍し味道中4、「柿それぞれ」
(左が、新潟で枝変りした「杉田柿」(平核無柿)、右が紀州の平核無、
上が同じ柿を焼酎抜きした柿)
北海道では、柿やみかんが成らない。
リンゴが、代表的な北国の秋の味覚だ。
しかし、柿の旨みは喩えようもなく、食止み難い。
先日のTVでも、ビタミンCはレモンやみかんをはるかに上回っていることを伝えていた。
柿の種類はどのくらいあるだろうか?
何と、世界には1,000以上もあるという。
しかし、大まかに分ければ、甘柿と渋柿。
北海道の人は、圧倒的に渋抜きのたねなし柿を好む。
内地の方は、甘柿好きのように思うのだが、どうであろうか。
上の写真の右下は、和歌山かつらぎ産の「平核無(ひらたねなし)柿」
別名「八珍柿」と呼ばれる。
これは、越後七不思議の次に珍しいから「八珍」と名づけられた。
だから、平核無は新潟県が発祥地だったのだ。
おそらく皆、逆に紀州から北陸に行ったものと思っているのではなかろうか。
奈良・和歌山が終りかけると、同じ種無しでも「庄内」「おけさ」が出てくる。
何でも明治初期、庄内藩家老職の酒井調良が苗木を庄内地方に持ち帰り
産地化したものが「庄内柿」。
昭和初期になって佐渡郡羽茂村農会技術員が庄内柿の穂木を
佐渡島に持ち帰り産地化したものが「おけさ柿」という。
ちなみに、よく聞く「刀根柿」。
これは、奈良県天理市の刀根淑民の農園で栽培されていた平核無が突然変異し、
1980年に品種登録されたという。
名前からして古種と思いきや、比較的新しいのには、驚いた。
右上が、愛媛八幡浜の渋柿を焼酎で抜いた「刀根柿」。
タンニンを不溶性にする渋抜き加工。
今ほとんどが、チッソガス充填の渋抜きが大半を占めている。
昔ながらの焼酎抜きは、時間が経つと、ことのほか美味しくなる。
渋を抜くことを動詞で「醂(さわ)す」という。
だから、別名渋抜き柿を「さわし柿」とも呼ぶらしいが、余り耳にしない。
(右上は四方にくびれがある「次郎柿」。左は樽柿系の「甲州百目柿」と「西条柿」。
右下は「富有柿(松本)」)
上の写真の右は、「松本柿」。
富有柿の早生種というが、「西村」「伊豆」「松本」「早生富有」「本富有」と出荷が移る。
種有りの甘柿は、本州の人には馴染みだが、北海道では、意外と好みが薄い。
しかし、元々甘柿と渋柿は別種と考えていたが、
何と甘柿は渋柿の突然変異種らしい。
しかも、日本特産の品種である、というから驚く。
甘柿でも、熟すと常に甘みを持つ完全甘柿と、
種の有無・多少により成熟時に渋が残ることがある不完全甘柿に分類できるという。
ちと複雑である。
完全甘柿の代表的な品種は、「富有」と「次郎」。
「富有」は岐阜県瑞穂市居倉が発祥で原木があるが、
今では各地から入荷している。
「次郎」は静岡県森町に住んでいた松本次郎吉に由来する。
次郎さんだったのか。
柿の名称に、姓の由来が多い中、名が使われるのは珍しい。
「次郎」は私の大好物で、確かに、森町から入荷する次郎は絶品だ。
その他、不完全甘柿の代表的な品種は、愛知県が発祥の「筆柿」や
神奈川県が発祥の「禅寺丸」などがある。
一度この「禅寺丸」を食べてみたい、とかねてから思っている。
渋柿 の「蜂屋柿」の樽詰めや「市田」の干し柿が、
入荷する時節ともなれば、年の瀬も迫っている。
愛媛の福岡自然農園や福島の横川農園から「西条柿」が送られ、
皮をむき、軒に吊るすともなれば、冬の到来いよいよとなり、
身もそぞろに気ぜわしくなって来る。
今年も残すところ、後二月あまりである。
(まほろばビオソフテリアでの干し柿の新聞記事)