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2008年12月22日

●句集 「東の光」

     三千年(みちとせ)の 東の光 北国(きた)に夏

まほろば自然農園を手伝って下さっている竹縄律子さんの
句集「東の光」の増刷版が、このほど出版された。
ご主人共々、まほろばとは長いお付き合いで、肝胆相照らす仲。
しかし、長く獣医で道の酪農発展に貢献されたご主人馨さんが亡くなられた。
信じられない突然の死だった。

http://www.mahoroba-jp.net/about_mahoroba/tayori/oriorino/oriorino5.htm
(「折々の書」の中の『死と生』をご覧ください。)

東の光り.jpg

しかし、今はその死生も超克されて、奥様はわが道を歩みだされた。
きっと、ご主人が背中を押してくださっているに違いない。
いや、そうではない。
お二人して横に並んで両手を繋いで歩んでおられるのだろう。
竹縄さんは今もなお、後もなお「二人同行(ににんどうぎょう)」なのだ。


        あ と が き U

もう句は出ないと思っていた二〇〇一年。
そのままにしておけば私自身、バラバラになりそうな気がして、
年代順に詩や旬を一本にまとめてみた。
その後、父は印刷にかけた分だけ山の木を伐ったと言う。
自然保護派の父が、分身のような木を伐ったのだから驚いた。
仕方なく千を出した。

今春携帯電話を持ったことで、この異質の侵入物のせいか、ふと短歌が出た。
堰を切ったように、次々と短歌になり、こんどは詩が出て
最後に句が出て来た。
天国と行き来できることばの道は広い。
隈界まで来て急に軽くなった。

故郷を離れて白立しようとしたはじめの詩が、2003 つべつ
-安藤美紀夫特集ーを友人と作った時、当時の学校新聞の中から見つかり、
最初の詩に加えることができた。
今年湧いてきたものは、おしまいに入れて、
私の歩んだ道を一本に完成させることができた。

私はいつものように差ずかしがって、首をすくめ、亀のようにしていると、
夫が一生懸命人の中を歩き、のみものをすすめ、
場を取り繕ってくれている夢をみた。
生れながらの大きな借りを、夫に出会えたことで
返すことができたような安堵感の中にいる。

                         (二〇〇八・九・二〇)

     雪月夜 夫(つま)の灯(あかり)の 一(ひとつ)待つ

  五十五年

詩を書き始めた一九五三年。
「朝」の詩を書いた一九五四年。
発芽のために燃やして埋めた一九五九年。

俳句に出会った一九八○年。
俳句の空しさも知った二〇〇〇年。

土作りをみつめて共に汗を流した。
有機無農薬。ゼロ・ワンテスト。
雑草との共生。不耕起栽培。
農園は法人化し、
質のよいたべもの作りをめざして、
若者達が寄ってくるところまできた。

北緯43度。札幌。
ふつふつと湧き出す、ことばの泉。

体内にずっとあった。
北国の光のあかるさ。

師は数少ない旅の終りに、
エジプトに飛んだ。
この東洋の、ことばと。
北国の人々の、土着の根強さを。
確かめて、逝った。
そのとき。
歴史が変わることを見ていた。

     俳句脳 世界に翔ける 心太(ところてん)

東の光り 5.jpg

(句集「東の光」253p 別冊付録つき ¥1,500)

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