●儂(「わし」と「おやじ」)の昆布
この昆布はただの昆布ではない。
これは、親子・父子の物語が隠されている。
儂を「わし」と「おやじ」と呼ばせている。
「わし」が採った昆布は、即ち「おやじ」の昆布でもある。
昆布漁一つで俺を独り立ちにさせてくれた昆布。
利尻から離島して幾春秋。
今、年老いてどうして暮らしているだろうか。
正月にも帰らなくなってから、もう何十年にもなる。
出来れば、家族兄弟が寄り添って一緒に酒を酌み交わし、
おふくろさんが作ったうま煮や雑煮を食いたいものだ。
家から送られたこの昆布を見るにつけ、
子供の頃、前浜で昆布採りや日干しを手伝わされた記憶が甦る。
村のみんなと一緒に歓声を上げて賑わった浜辺が、
今の自分を育ててくれた。
この心を育ててくれた。
今も夢見る「利尻の富士」よ。
生涯、利尻とおやじからは、俺は離れられない。
ありがとう、
ありがとう、・・・・・・・・。
昨年欠品した「利尻昆布」が、再入荷した。
見るからに、力強く、光沢に満ちた色艶があり、
おそらく一等検として遠く京にて売り買いされる格であろう。
稚内一円の道北昆布が、利尻昆布として売られている。
しかし、本当の利尻昆布は、そのわずか一握りでしかない。
その風格は、天然物として矍鑠然とした趣がある。
だし汁にすれば香り高く、その風味は京都の千枚漬けや湯豆腐にも定評。
味わい深く、「おぼろ」「とろろ」にも向く。
養殖も行われているが、やはり天然物の深い風味に叶わない。
これほどの品質はそうざらに見られるものではない。
料理の基本は出汁にある。
舌に濁りがある時は、先ず舌を澄ませ。
それは海水の汐に練られた昆布出汁に限る。
「先ずは、昆布以って基本に立ち帰るべし。
これ、料理における骨髄にして常道なり」
この『料理大全』の結語に注目したい。
ある昆布漁師の息子さんとの縁が出来て、
この産地直送の「利尻昆布」を入手出来た。
そう、その孝行息子とは、
まほろばの島田浩編集長、その人であった。
彼は、利尻生まれの海育ち。
大自然に育まれた彼の感性はピュアで深い。
一方、大橋店長も、士別生まれの畑育ち。
まほろばの双肩は、北海道の大地から生まれ育った野生児だ。
だから、まほろばはしっかりと
「大空と大地の下」で根をはり、天に向かえるのだ。
頼もしい奴らなのだ。
「儂(わし・おやじ)の昆布」 150g ¥1,300