●酒庵「藍」さん店仕舞
酒庵「藍」さんが、4月一杯で暖簾を下ろすとの知らせがあった。
古代染めの吉岡幸雄さんと盃を酌み交わしたり、
或いは、店の慰安会に使わせて戴くなど、
手が籠り、しかも格調のある料理の数々に、
声を挙げて、何時も舌鼓を打っていた。
札幌から、また一つこのような灯が消えるのは、
眞に惜しく寂しい。
女将の米村さんは、風流の人で、
手紙の文一つとっても、
さりげない工夫が心に届く。
陶磁器に詳しく、金継ぎを自らされるなど、
日本の文物に対しての造詣は深い。
当然、調理も伝統的懐石膳、食養膳の
京風から北海道の郷土料理まで、
さまざまな手を見せて下さる。
先の桃の節句から古雛や民芸雛のコレクションを店内に飾り、
最後のシーンとして別れを惜しんでいる。
古典への涵養も、現代作家の賛美も二つながら
良き物は良しとして手元に置く。
かような人の味と人柄に接する機会が、
これから少なくなるのかと思うと、
哀しくも寂しい想いが募る。
可能なれば、後残された日々を惜しみつつ、
短き暖簾を潜られんことを、望みたい。
酒庵「藍」
札幌市中央区南5条西18丁目2-32
011-551-9044