« 09年度 苗木販売会 | メイン | 磯田・金子さんご夫妻 »

2009年05月17日

●春がよんでるよ

img2089[1].jpg
(友竹正則、NHK東京放送児童合唱団
1963年(昭和38年)2月-3月期放送)

一昨日、NHKFMをかけながら仕事していると、
突然、子供の頃口ずさんだある歌が流れた。
その時、鳥肌が立ったというか、
懐かしさが込み上げて来て、
その日以来、曲が頭から離れることがなかった。

他人が聴くと他愛もないと一笑に付されるであろうが、
当の本人は何故か真剣になってしまった。
それは「春がよんでるよ」という童謡、
1963年に「みんなのうた」で放映されたポーランド民謡だった。

http://j-ken.com/category/all/data/669787/

「春がよんでるよ」

ひばりのこ すずめのこ
飛びながら 何を見た
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春がよんでるよ
あの土手に 寝転んで
お弁当 食べたいな
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春はすてきだよ

もぐらのこ かえるのこ
動き出せ 目を覚ませ
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春がよんでるよ
ほがらかに 歌う空
若草も 声合わせ
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春の歌声よ

(作詞:小林幹治  曲:ポーランド民謡)

たんぽぽ2.jpg
                 (島田浩ph)

軽やかな澄み切った青空に、
今にも燃立つ春の気が、
期待に満ち充ち、嬉しそうに
人も動物も野原に駆け出しそうになる
明るい曲なはずが、
何故か儚い陰影を落としている。

その短調の短いフレーズの中に、
悲しい物語が隠されているようで、
それはポーランドの辿った悲哀の歴史が
民謡として歌い継がれたものだろうか。

幼稚園の児も歌っているこの唄に、
音楽のもつメッセージの深みを感じて
胸が締め付けられるような叙情に泣いた。

2141593452[1].jpg
      (よだかの星)

「春がよんでるよ」の
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨのフレーズに、
後に学んだ古歌、

   ほろほろと 啼く山鳥の 声きけば
            父かとぞ思ふ 母かとぞ思ふ

         
の音調が、既に少年の心に届いていたのだろうか。
歌うたびに切なくなる節に、
今は亡き父と母を思い浮かべるのだろうか。

宮沢賢治は散歩をしているときに、
時々「ほっほー ほっほー」と叫んで飛び上がったという。
「鳥のように…唄って暮した」という賢治の心の水底にも、
この「ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ」の調べが何時も流れていたのだろう。

Img0025[1].jpg

当時、戦前に国内では聞かれない欧米の民謡や童謡が、
「みんなのうた」で紹介され、何よりも毎日テレビから
流れてくるその歌声を楽しみにしていた。
少年少女合唱団の高く澄んだ声に憧れたものだ。

img2088[1].jpg
(おお ブレネリ)

ちょうど小学校の4年から6年生にかけてだろうか、
裏声が出て、自分でも驚くほどの歌唱に酔った。
いわゆるボーイソプラノという領域だろうか。
音楽で歌うことを、どんな学科よりも好んだ。
それで、女の子にもてた事も、気を良くさせたのだろう。

しかし、中学に入ると同時に、その声は失われ、
それまでの天上の気分は一遍に吹き飛んでしまった。
その3,4年間の数々の思い出の曲が、私の情操を
育んでくれたのだろう。
きっと、同年代の人は、少なからずそんな気持ちでいただろう。

img1811[1].jpg
(踊ろう楽しいポーレチケ)

少年時代、あの青空の彼方に何を見ていたのだろうか。

「ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ・・・・・・・・・・」

虚空からの呼び声が届いているだろうか、今の私に。

ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ・・・・・・

春の花が咲く.jpg
                    (島田浩ph)

http://j-ken.com/category/all/data/669787/

コメントする