●トゥルマカシー(ありがとう)!!
農園の松本和也君夫妻が、先日新婚旅行に、バリに行きました。
農繁期に結婚した彼等は、農閑期を利用して遠出したと言う訳です。
その感想を朝のミーテイングで披瀝してもらった所、
とても感動する内容だったので、皆さんに公開するよう文章にしてもらいました。
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「トゥルマカシー(ありがとう)!!」
松本和也
昨日、無事に帰りました。
バリとの気温差四十度!
札幌の寒さを改めて実感しました。
日没後に到着したバリ島のングラライ空港では、
『沖縄?那覇空港?』の第一印象でしたが、
機内に?デジタルカメラを置き忘れている事に気づき、
係の人に座席を調べてもらうように身振り手振りで話しましたが、
なかなか分かってもらえない事で『異国の地』であることを思い知らされました。
そして、買ったばかりのデジカメは発見されず、妻とは険悪なムードに…。
相方が膨れたままツアーガイドのウィリア(日本語が喋れる)と
合流してバンに乗り込み、標高五・六百メーターあるウブドへ。
暗く狭い道には露店からのスパイシーな匂いと、
無数に点在する寺院からの香の匂いが湿った熱気と混ざり合い、
異様な雰囲気を醸し出していました。
通りは車以上に沢山のバイクが行き交っていて、
中には子供を3人も乗せたママさんスクーターや小学生?ぐらいの悪ガキ二人乗り、
腰の曲がったお婆ちゃんまでクラクションを、
ビービー鳴らしながら飛ばしているのには驚きました。
流れるライトに照らし出されるのは、道の両脇に立つ椰子の木や
バリ・ヒンドゥーのガネーシャ神像、雑然とした路地でたむろする人の蠢く影。
目だけが白く浮き上がって見えて変に警戒心を煽られました。
ウィリアの日程説明と個人的な営業を聞いていると、ウブドに到着。
ウブドは棚田での稲作と寺院、芸術の村として
近年観光地化が急速に進んでいる村のようです。
村の通りにはブティック・ワルン(高級なレストラン)やお洒落な洋服屋があるかと思えば、
野良鶏や野良犬、野良牛がいたりします。
村の中心部近くにあるモンキーフォレストと呼ばれる森の中にはヒッソリと寺院が佇み、
沢山の猿たちが自由気ままに暮らしていました。
治安と道路整備は共通していて、歩道と思われる側道を歩いていると
日本では信じられない大穴がそこらじゅうにボコボコと開いていて、
特に街灯の無い夜は足元に注意して歩かないと、かなり危険でした。
ウブドではテガルサリと言う安宿に二泊しましたが、
名前に反して予約を取ることが難しい人気の宿です。
一人一泊朝食付きで四・五千円ですが部屋はとてもキレイで
(シャワーの元気はありませんが) エアコン付き。
テレビは無いけれど、蛙と虫の鳴き声が響き渡り、
テラスの灯りには虫やヤモリが集まって意外に賑やかな夜でした。
夜中に降ったスコールのお陰で空気が洗われ、
翌朝テラスから眺めた景色は格別でした。
二階のテラスからは見渡す限りの水田が広がり、
遠くには椰子の木や鬱蒼と茂った森。
あとは青い空に入道雲があるだけです。
見た事のないカラフルな野鳥が飛び交い、
聞いた事のないさえずりが入り混じって、楽園?のようでした。
白一色の札幌から暗い夜に到着したので、余計に眩しく感じたのかもしれません。
さっそく通りへ出てウブドの村をぶらぶら散歩して
(インドネシア語でジャランジャランと言うそうです。)
迷路のような市場を歩いたり、インドネシア語の本を片手に安いサンダルを
更に値切り交渉したりしました。
夜には伝統舞踊のレゴンダンスを鑑賞。
インドネシア料理も堪能。
ナシゴレン(焼き飯)やミーゴレン(焼きそば)は大外れが無く無難なメニューでしたが
ナシチャンプルーに関しては、その店の力量が明確に分かる一品でした。
ナシチャンプルーは皿の真ん中にライスをこんもりと盛り、
その周りに5・6種類の惣菜を乗せただけですが、
その惣菜は店の看板商品が並ぶ事になるので、
ナシチャンプルーが美味しくなければ
他のメニューを頼んでも美味しくありません。
逆にナシチャンプルーが美味しければ、
ほとんどの料理は美味しいということになりますし、
気に入った惣菜を単品で頼む事もできます。
席に着いたらメニューも見ずにナシチャンプルーなのです。
他に気に入ったインドネシア料理はソトアヤムなる食べ物です。
簡単に言えば、鶏スープ。
でも、これがあなどれないのです。
スープには細かく裂いた鶏肉のほか、
ゆで卵、もやし、春雨、キャベツ、万能ねぎ、スレドリ(インドネシアのセロリ)などが入っていて、
店によってはジャガイモやトマトなども使われています。
スープ自体はターメリックベースです。
ここに薬味としてサンバル(真っ赤な色の辛い調味料)とライムを絞って食べる。
この二つの薬味は必ず入れたほうが美味しくなると思います。
いざ、食べる段になって大切なのは食べ方だそうです。
スープとしていただくと言うよりライスを一緒に注文して(言わなくても出てきましたが)
スープカレーのよう食べるのが流儀なのです。
しかし、スプーンにすくったライスをスープにくぐらせて食べるのでは無く、
スプーンにすくったスープをライスにかけてからパクリ。
…そのへんの細かいところは自由だと思いますが…。
人によってはライスを三分の一ぐらいづつスープに入れて食べるそうです。
インドネシアの食べ物に関しては何の違和感も食中毒もなく美味しい!
(エナッ!)とても満足でした。
ところが、他の事でチョットした問題がありました。
ウブドや三日目から行った海の村ジンバランでも、
通りに立つ現地の人達(勧誘?)が、
『ホテルドコ?!タクシーノルカ?』や
『ミヤゲミヤゲ、ヤスイミセツレテク!』
と声をかけてくるのが、かなり忙しいのです。
無視をするのも気分が悪いので、はじめの頃は
『ティダッ マウ(いらない)』と断っていました。
しかし、『ティダッ マウ』と断ると
『ティダッ マニ?(金無し?)』や
『ティダ!ティダティダッ〜!(意味不明)』と、
からかう人もいて御互いに気分が悪い。
中には『ナンデヤネン!』と怒鳴る人も。
これはきっと旅行に来た関西の方が,
あまりにも声をかけらるので『なんでやねん!』
と突っ込んでいたのを現地の人が憶えたのだと思います…。
…とにかく、これには困りました。
これからの数日間、気持ち良く過ごすには、
この問題を解決しなければと思い少し考えました。
そこで、こう言ってみる事にしたのです。
笑顔で
『トゥルマカシー』 (ありがとう) と。
早速、試しました。
現地の人 『ヘイ!タクシノル!?ホテルドコ?』
自分 『トゥルマカシー!』
現地の人 『… トゥルマカシー サマッサマッー』(どういたしまして)
なんと、十割に近い確立で『どう致しまして』と笑顔で返してくれるのです。
全身にタトゥーを入れた現地の人が、
『ニホンジン?タクシノルカ?』と、言い寄って来ます。
そこで、合掌しつつ『トゥルマカシー』
すると、相手も合掌しつつ『トゥルマカシー サマッサマッー』
それからはタクシーに乗る際にも乗車してすぐ、
ドライバーに『トゥルマカシー』と声をかけていました。
すると、何も言わなくても、きちんとメーターボタンを押してくれ、
その上しつこい勧誘などもして来ないのです。
何度目かのタクシーでは下車する際に、
迂闊にも財布をシートの下に落していましたが、
親切にドライバーが教えてくれた事もありました。
(相方にはこっぴどく怒られましたが…。)
今回の旅行では感謝の心や言葉がもつ、
不思議な力を強く感じる事が出来ました。
もともとは農耕主体の静かな王国だったようですが、
ここ数十年の間に観光と言う名の侵略が進み、
物価が上昇して貧富の差が大きくなったようです。
馬車と自転車ばかりだったという通りにはバイクと車が溢れ、
石造りの歴史ある建物が壊されて、
新しい観光客用のショッピングセンターが建てられていました。
日に焼けて、日本人だと思われなくなった頃に、
少しだけバリ人の立場で考えてみました。
何処へ行っても英語か日本語で話しかけてくるバリの人達。
ホテルですれ違うベルボーイも、『ハロー』と挨拶してきます。
私がインドネシア語で、『スラマッパギ!(おはよう)』、
と挨拶をすると、少し驚く人もいるぐらいです。
伝統あるレゴンダンスやケチャックダンスは、
観光客用に手短に省略されたり改良されたりしているそうです。
なんだか自分の身体を観光客に切り売りしている様な複雑な気持ちになりました。
と、少しだけバリニーズになってみたりもしました…。
最後に、ウブドから車で40分ぐらいの所にあるエレファントパーク行って来ました。
象の背中に乗って森の中を30分ほどジャランジャランします。
無くしたデジカメの代わりにウブドで使い捨てカメラを泣く泣く購入したので、
記念撮影しようとポケットから取り出した時、
勢いあまって落としてしまって、さあたいへん。
(また横で相方が膨れ出しました…)
私がオロオロしていると、象の頭に乗っている飼育係の人が何やらつぶやきました。
すると、象が鼻先でカメラを掴み上げ、静かに私の手元に差し出してくれたのです。
驚いた私が飼育係の人に片言の英語で『この象は話せるのですか?』と聞くと 、
英語で『インドネシア語だけね!』と、言って笑っていました。
『トゥルマカシー!』
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何か、東南アジア版「ホ・オポノポノ」を見せられている感じで、
「ありがとう」は万国共通語であり、共通の心であることを知らされました。
ことに、「どういたしまして」の『サマッサマッー』が、
≪様。様。≫の語感をイメージして、これも非常に象徴的だな、と感じました。
相手を敬い拝すれば、自ずから相手から敬い拝せられる。
この畏敬と感謝の原理は、何処でも同じなんですね。
ことに、仏教国なので合掌の功徳も手伝っているのでしょう。
松本君の新婚旅行、デジカメの写真はなかったけど、
画像には写らない、鮮明な心の画像が残って、
一生の宝となりそうですね。
お目出度いことです。
この出来事をみんなでシェアして、
『トゥルマカシー & サマッサマッー』を
合言葉にしたいですね。