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2010年03月04日

●『人間の建設』

人間の建設 1.jpg(初版本『対話 人間の建設』岡潔、小林秀雄)

その人生を決定付ける一冊の本がある。
私にとって、それは『人間の建設』だった。
確か15、6歳の頃、手にしたものだ。
それから自分の人生が方向付けられた、
と言っても過言ではない。

今に至るまで、その歩みは変わらなかった。
若き日々の苦悩も、今日の営みも、
その根底を動かすものは、この二人の
人生の巨匠から出でたものだった。

決して、私は読書多き方ではない。
主に、中国古典を好んだが、
身に詰まされ、心を喚起させるものは、
この一書から、始まったと言ってもよい。

人間の建設 3.jpg


私の世代、影響された方々も、さぞ多かろうと思う。
しかし、私にとって、それは多くの友と
全く別な道に向かう孤独な選択でもあった。
だが、それがあってこそ今日があるとも言える。

私の小さな経験や気付きが人様の役に立つとは思えない。
しかし、新鮮な眼で、この『人間の建設』を読まれると、
きっと、今までにない古くして新たな道が開かれていることに
気付かれるに違いない。

人間の建設 2.jpg

これは歴史に遺る第一級の名著だと思う。
かつてのソクラテスとプラトンの会話に匹敵するものだろう。
分かり易い言葉の中の滋味深い意味合いは、
約半世紀経っても色褪せるどころか、
益々、いぶし銀の光沢が発せられる。

この度、新潮社から文庫本として発刊された。
特に、若い人にはこの珠玉の書を是非読んで頂きたい。
良識と知性の何たるかを、垣間見られるであろう。
きっと、一生の宝になるであろうことを信じる。

岡潔、小林秀雄/著
新潮文庫  ¥380





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