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2010年03月15日

●詩吟革命

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先週の朝日新聞朝刊の「人」に、詩吟の若き女性宗家が、西洋楽器とコラボで、
新境地を開いている、との記事に興味をそそられた。
早速、タイトル『故郷』のCDを購入して聞いてみると、
その清々しい美声の伸びやかで、
抑制の効いた音楽性に、すっかり魅了された。

そこには、こう記してあった。
「詩吟の常識を完全に覆す、挑戦的アーティスト現る!!
やまとなでしこの奏でる次世代ジャポニズム
  従来の、琵琶や尺八、筝といった伴奏楽器を一切使わず、
  アンビエントやアコースティックギターと詩吟を融合させた
  究極のジャパニーズ・モダン&ヒーリング・ミュージック」

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「これが究極」と書かれては困るが、それで思い起こされたのが、
武満徹の『ノヴェンバー・ステップス』だった。
私が17歳の時、ニューヨークで初演されたこの曲は、
当時センセーショナルな世界的事件であった。

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それは、それまで誰も試みたことがない
西洋楽器と和楽器の合奏という大胆な発想だったからだ。
オーケストラで日本旋律をなぞったり、曲想を得たものはあったが、
全く東西の語法を対峙し遭遇させた場面には何人も出会わなかった。

新手法を工夫したとはいえ、尺八も琵琶も古典本曲を踏襲したもので、
オーケストレーションは、メシアンやドビュッシーを
髣髴とさせる武満の語法であった。
しかし、その異質の壁が、却ってそれぞれを引き立たせ、
斬新な音響の世界を切り拓いた。

武満 ノヴェンバー 左右.jpg

そこまでの深刻さは、到底ないものの、
最近の和楽・洋楽の境を払って、コラボするミュージシャンが増えている。
私としては和洋折衷の感が否めず、詮ずる所詰らないと感ずるものが多い。
だが、今回の井口弘子さんの確りした伝統的技量と音楽性には、
その弊を飛び越えて、これからの若い子女に、
日本文化を啓発するには、素晴らしい誘い水であると思った。

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(CD「故郷」¥1.200 まほろば入荷 3月30日決定!!!)

詩吟の歴史は、さほど長くはなく150年ほどのものと聞く。
彼女のデヴューで、古典的な立場を執る先輩の反感もあろう。
しかし、従来のアンサンブルでは、今の若人には受け難いだろう。

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民謡の里唄と共に、詩吟は和歌や漢詩に節を付けた朗々たる詠い振りで、
情操教育や古典に親しむ機会を与える
大きなジャンルになるのではないかと期待している。
志を高く、心清々しくさせる詩吟の隆盛を望むや切なるものがある。

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