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2010年03月25日

●牛の鈴音

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「私と牛、どっちが大事なの!!!」
毎日、婆さんから小言を言われ続けるチェ爺さん。
「農薬を撒かないから、米の実入りが悪い!」
でも、だまって黙々と牛の草を刈り続ける。
撒けば、牛は草が食べられなくなる。
「機械を使えば、早いしキレイに稲が刈れるのに」
でも「収量が減る」と手刈りを続ける。

79歳の爺さんには寄り添うように老牛がトボトボと歩く。
今年40歳にもなる。
牛の天寿は15年、奇跡のようだ!!
どうしてだか分からないけど長生きしている。
でも、この牛のお陰で子供も育て上げられた。

「いい加減に、牛を売れ」
「ワシをとるか、牛をとるか」
周りから何と言われようが、婆さんからうるさく罵られようが、
一向に貸す耳を持たない。
今朝も牛の荷車で畑に行き、田を耕し、
よろよろの老いぼれ牛と
よぼよぼの老いぼれ爺さんの背には、
金色の西日が眩くきらめく。

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ゆったりと時間は流れ、
確実に老いの皺は深くなる。
チェ爺さんの頭病みは止まらない、か細い足はなえて、
足先の骨は曲がって痛々しい。

医者は「働くのをやめなさい」と諭す。
でも、老牛のために、今日もカスカスの骨皮だらけの老体に鞭打って、
草を刈り、背に負い、フラフラとふらつきながら餌を与える。

精も根も尽き果てて、ついに牛をせり場に出すも、
誰からも相手にされず、またトボトボと帰路を辿る。
本当はチェ爺さんは嬉しかった。
しかし、ついに相棒も息果てる朝を迎える。

土葬された周りは、相も変らず美しい光が土を黄金に変える。
まるで、浄土のよう。
チェ爺さんも、もうすぐ後を追って天国で一緒に畑仕事をするのだろう。

あれだけ憎まれ口を叩いた婆さんが、
「国一番の牛だった」と洩らした。
老いぼれ牛も、天で「クスッ」と苦笑いしたに違いない。

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口コミで広がったこの「牛の鈴音」。
韓国国内で約300万人を動員。
およそ15人に1人は観て、「牛の鈴症候群」になるほどの
社会現象を生んだという。

変化を求め過ぎた現代社会。
今一歩、立ち止まって、後ろを振り向くことがあっても良いんじゃないか。
物分りのいい人だらけになって、何か違うんじゃないか。
家に頑固爺さんや意固地婆さんの一人や二人いることが、
実は健全な国であるかもしれない。

僕らも、そろそろ走るのは止めて、歩きたい。
歳も歳なんだから・・・・・・・・・・・

(・・・・演技も演出もないのが良かった。・・・・)
(・・・・「無為」ということは「有情」という意味合いがあったのだ!!・・・・・)
(・・・・ともあれ、この若き監督の感性というより、魂に乾杯!!!・・・・・・)

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「シアターキノ」
狸小路6丁目 南3条グランドビル2F 011-231-9655
http://theaterkino.net/
4月9日まで(延長になるかもしれません)

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