●奥田シェフinまほろば #6 終わりへ
立食後、立って、座ってのレクチャー。
料理も旨いが、話しも上手で、肩に力の抜けた感じが、
聞き易く、不思議な説得力がある。
しかし、瞠目に値する内容は、彼の全方角的視野だろう。
若い頃、家庭的金銭の苦労から、現実的に生きることの知恵を学んだ。
単に、料理を覚えての雇われ根性でなく、自ら上に立ってのマネージメント。
食べ物屋ほど、採算が合わず、長く続けることが困難な商売もなかろう。
ソフテリアを開いて、つくづく思うのだ。
市内では次から次へとレストランやカフェがオープンする。
最近はことに、オーガニック系の店が多い。
しかし、現状は1年持つかどうかの厳しさで、消えては現れ、そして消える。
待遇も厳しく、薄給の上、労働時間も長い。
それでも食べるために、きつい条件下で働いて、双方やっとなのだ。
何でもそうだが、一人前になろう、一角の人になろうとすれば、
人の3倍も10倍も働かねば、物にはならない。
賃金や待遇に不平不満ばかり抱いては、物の道理は見えて来ない。
奥田シェフの話を聞くと、いわば泥縄式に覚えた現場主義だ。
先に知識があって成ったのではなく、その時々に直面した問題解決。
そこから生きた知識や感性が磨かれていった。
作物一つとっても、よく出来た料理人でも、生産者の顔や栽培云々で満足するだろう。
だが、彼は地理的条件や歴史背景を学ぶに、
それこそ産学官一体になって取り組み、学者に働きかけ、農家仲間を掘り起こし、
地域の意識革命を起すまでやった。
一人の意識で、県民まで動かす奇跡をやってのけたのだ。
まさに、庄内で「小国寡民」が実現されつつあった。
庄内といえば、道民にとって庄内柿くらいしか思い出さない地方だが、
イタリアでフランスで先に有名ブランドになってしまった。
これは一介の料理人の仕業ではないだろう。
彼の中には、経営というある種、政治的手腕というかセンスがあった。
店内をまとめ、県内をまとめ、さらに外にまで影響力を持つのは並では出来ない。
かの小泉武夫先生は、「中国の宰相は料理人でもあった」と語られていた。
一目顔相を観ては、診断して料理の献立をして、各大臣の体調を整えたという。
目利き、味利きは相通じて、何事にも洞察力が鋭く、さてどうすべきかも知っている。
宰相の宰はウ冠に辛いとも書く、人生辛い目にも遭わねば、人情機微に通ぜぬだろう。
そんな意味でも、彼は苦労人で、人の気持ちも汲んで上げられるのだろう。
今回の件で色々あったが、その判断や処置を見て、そう感じた。
明治開拓時、東北から北海道への移住者は多かった。
何かしら、言葉の端々から、親しみが感じ取れ、懐かしさがある。
20年前、有機専門卸しの米内会長と山形は高畑町の農民詩人、
星寛治さんを訪れて、はじめてそこが「北のまほろば」なることを知った。
今でも脈々とその魂の河は流れて、彼に流れ着いていたのだろう。
まほろば同志というか、小国同士、これからのお付き合いも続くであろう。
幸いこのご縁で、ソフテの茶間が「アル・ケチャーノ」でお世話になることになった。
彼女の長年の夢が実現し、思いっ切り羽ばたいて欲しい。
そんな折一昨日、共働学舎の宮嶋夫妻が来店された。
もう創業以来のお付き合いで、今では子供同志も仲が良い。
まほろばフェアの前日の25日、トマムでの夕食会に参加されたという。
その時の感動を語っていたが、最初は薄味で、だんだん輪郭が出て来て、
最後の盛り上がりで主張する、その交響曲のような味の演出の素晴らしさを語っていた。
また先日、家内が東京での毎月の連続講座「インテグレード・マクロビオテック」から帰って来た。
「あぁ、美味しかった、凄かった!!」
「何が?」
「タカコさんが、日高さんに頼んで、シェフ直々の料理をご馳走になったのよ!」
「えぇ!!いいなぁ・・・・!」
とまあ、こういう垂涎の垂涎で、涎が垂れっ放しの会話だったのだが。
実は、会主催の今をときめくタカコ・ナカムラさんのご主人は、
日本におけるイタリアンの第一人者・日高良実さんなのだ。
広尾の「アクアパッツァ」でご馳走になった家内の羨ましかった事・・・・・。
そして、何と奥田さんはこの日高さんの処で修行されていたというのだ。
http://www.acquapazza.co.jp/(アクアパッツァHP)
縁は、目に見えないところで繋がっている事は驚くばかりだ。
タカコさんは、鶴岡の「アル・・・・」にも行かれ、
「とても、美味しかったわよ」と家内に語られたとか。
目くるめくご縁の輪、ときめく感動や、涙す出会いは、やはり意味があるのだ。
この世は、いわばインドラ網で繋がり繋がっている。
みな、ご縁の網の目にかかり、神様の漁で、すなどられて居るのだ。
コメント
この世は、いわばインドラ網で繋がり繋がっている。
みな、ご縁の網の目にかかり、神様の漁で、すなどられて居るのだ。
きゃ
Posted by: 言葉響きます | 2011年03月17日 22:08