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2011年04月07日

●『日本が進むべき道は・・・』 中島紀一教授

先月19日に、まほろばで講演予定だった
茨城大学農学部・中島紀一教授のお話しされた記事が、
「関西よつ葉連絡会」の『よつばつうしん』に掲載されましたので、
許可を得て、ここにご紹介いたします。
当日のお話もきっとこのような内容だったと思われます。

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日本が進むべき遣は「開国」=「通商国家」ではない

―TPPの喧曝のなか、いま改めて農と食と地域の結び合いの意味を考えたいー

                          中島紀一(茨城大学農学部教授)

菅首相の昨年9月の国会での所信表明演説で、
突然、TPP(環太平洋連携協定)への参加検討を表明して以来、
マスコミではTPP参加…「第三の開国」の大合唱が続いています。

TPPの実態、TPP参加交渉とはどんなことなのか、は
依然として不明なところだらけなのですが、
「環太平洋」と言っても、結局はアメリカ主導の強烈な自由貿易協定であり、
そこに参加するためには、日本が丸腰、丸裸になることが前提とされ、
結果として、日本はアメリカの言いなりの自由市場となり、
アメリカ主導のグローバル化の仕組みの中で、
日本は国家主権の放棄に近い事態に陥っていくだろうことがはっきりしてきました。
恐らくそのことで中国との関係は厳しいものとなっていくでしょう。

食料主権の回復こそ課題

たとえば、食の安全性の分野では、アメリカはすでに「輸入牛肉の月齢緩和」
「遺伝子組み換え食品の表示義務の緩和」「食品添加物規制の緩和」
「残留農薬基準の緩和」
などの、安全性無視の要求を日本政府に突きつけています。

TPPへの参加交渉の前提として、
アメリカはまずこれらの事前要求を受け入れることを求めるでしょう
TPPに参加し、第三の開国をすれば、100円の牛井が実現する、
そのために日本の農業が潰れても仕方がない、と主張されています。
とんでもないことです。

現在の食料自給率はカロリーべースで41%、穀物自給率は28%、
農地の自給率は27%という日本の現実を素直に直視すれば
「食料主権の回復」.「国土主権の堅持」こそが日本が取り組むべき
もっとも重要な課題であることは明らかだと思います。

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農地規制緩和は何をもたらすか

政府は農地流動化のために農地市場の規制緩和策を強行しようとしています。
全国の遊休農地情報をネットで公開し、
全国どこからでも農地の権利取得にアクセスできる仕組みが動き出そうとしています。
インターネットは世界に開かれており、
日本の農地法には国籍条項は明記されていませんから、
このままでは海外からのアクセスを遮断することはできないでしょう。

日本の食料生産の73%が海外の農地に依存し、
国内農地の利用率が90%に過ぎないという現実からさらに進んで、
日本の農地や林地が海外企業に押さえられていくという事態すら予測されます。

韓国企業はすでに16国で66件の海外農業開発に取り組んでいると報じられています。
世界の農地争奮がいま激しく戦われているなかで、
日本政府の対応はあまりにも暢気すぎると思います。

失われる雇用・地域、自然・風土

このまま第三の開国論を突き進めば、雇用も地域も
減茶苦茶になっていく
ことでしょう。
企業の生産、営業拠点は海外に流出し、国内には外国人労働者が大量に流入し、
労賃水準は安価な外国人労働者賃金に引っ張られて下落していくことになるでしょう。
中国からの農産物の大量輸入で、国内農産物の価格が下落しつづけている
現実からすれば容易に推察できる事態です。

TPP=開国論の諭議では日本の道は通商国家だという認識が
当然のこととされています。
たしかに「資源に恵まれない日本には、加工貿易による立国しか道はない」
という考え方は第二次世界大戦後の日本の基本路線となってきました。

しかし、そこには、日本の自然と風土を経済と社会の基本において活かしていく
という視点が欠落していました。
振り返れば、こうした国のあ.ゆ方が環境を壊し、経済を歪め、地域を痛めつけ、
そして社会をダメにしてきたのだと言わざるを得ません。

日本は決して資源小国ではありません。
四季に恵まれた温暖な気候があり、適度に雨が降り、豊かな土壊があり、
そこには実に多彩な生きものが生きており、そして風土を活かす文化の伝統があります。

それを踏まえて、
日本列島には素晴らしいレベルの農業生産と
安定した地域社会が築かれてきました

しかし、戦後の日本では、豊かな風土を経済と暮らしに巧みに活かしていくあり方は
国の基本路線としては退けられ、外部資源に依存した、
すさんだ貿易立国へと突き進んでしまったのです。

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土とつながる白給的な暮らしを

私たちはこうした国のあり方に強い危機感を覚え、
日本の自然を活かした循環型農業のモデルとして有機農業を提唱し、
その道を生産者と消費者の協力によって切り拓いてきました。

低投入、内部循環による高度な安定した生産体系を構築し、
地域の自然の恵みを活かした豊かな自給的な暮らしを創り出してきました

それは、アメリカ的な工業化された巨大農場をモデルとした「強い農業」論とは
根本的に異なった道です。

私たちはいま、「農」が変われば「国」が変わる、「地域」が変わる、「暮らし」が変わる、
と周りの人たちに呼びかけたいと思います。
その大前提は、農業・漁業・林業を大切にし、農村の価値を評価することです。

そして、健全な食といのち育む農を取り戻し、
土とつながる自給的な暮らしを再建していきましょう。
同時に、働き方を転換して、農業・漁業・林業を基盤とした
地域の持続可能な産業の連鎖を生み出していくことです

このことによって、子どもからお年寄りまで、
あらゆる世代が元気に生きる地域社会を創造すること、
これこそが21世紀を拓く大きな課題だと思います。

コメント

私も、食もエネルギーも自分たちの風土を生かしたものに転換していくことでよりよくなっていくと信じています。
土と触れ合う現実感のある生活をする人が増えていくことで戦後の貨幣経済、効率重視な考えや行動から市民一人一人がそれを超えたひとと自然とものを大事にする自発的な考えや生活にシフトしていくのではないかと思っております。

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