●武田教授 積載被爆の怖さ
東京 3月15日 と 5月15日
福島原発の爆発があって1日後、東京の空気中の放射線は急激に上昇し、
新宿などで1時間あたり1マイクロシーベルトに達していました。
この放射線は福島原発から直接、東京にいる人の体までやってきたのではありません。
もし、そうなら放射線は光の速さですから一瞬にうちに来ています。
でも、福島原発から放射性物質のチリが舞い上がり、
それが風に乗って東京に来たから1日も経ったのです。
東京で空気中のちりの中の放射能濃度がもっとも高かった3月15日10時から11時に、
東京の空気中に浮かんでいたチリは(立方メートルあたり)、
ヨウ素131が241ベクレル、
ヨウ素132が281ベクレル、
セシウム137が60ベクレル、
セシウム134が64ベクレル
でした(放医研データ)。
爆発直後だったので、半減期が8日のヨウ素131と、
半減期1時間あまりのヨウ素132が同じぐらいの放射線を示します.
また、半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137も同じぐらい測定されています.
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この1時間に東京の人が呼吸することによって被曝する量
(被曝期間についてはややこしいので割愛しますが、値は1時間あたりです)は、
ヨウ素131 : 1.65マイクロ
ヨウ素132 : 0.0244マイクロ
セシウム137 : 2.16マイクロ
セシウム134 : 1.18マイクロ
で、合計 5.0マイクロシーベルトにもなっていました
(成人、呼吸量22立方メートル、ヨウ素132は係数が低い)。
つまり、外部から1マイクロ、呼吸によって体内に取り込まれた放射性物質による
被曝が5マイクロで、合計6マイクロだったことが判ります.
外部被曝より内部被曝が多いことに注意してください。
1年は8760時間ですから、6マイクロに8760をかけると、
東京の人の一年の被曝量予想・・・53ミリシーベルト(1年)
という危険な値だったのです.
私が東京から離れるか、もしくはマスクをつけて口から入る放射性物質を
防ぐことが大切と言っていたことに相当します.
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ところが、それから2ヶ月(まだ2ヶ月は経っていませんが)、
東京の空気中の放射線量は、0.07マイクロ(毎時)で、
空間線量率は、ヨウ素131が0.0007ベクレル(立方メートル)、
ヨウ素132は測定出来ないほど低く、セシウム134が0,0021、
セシウム137が0,0020になっています(公的データだからやや信頼性に不足する)。
2ヶ月で二つの公的データは、1万倍以下になっていることが判ります。
すでに東京では「マスク」は不要になり、食材を注意していれば、
空間からは1年に0.6ミリシーベルトの被曝を受けるに過ぎません.
「原発事故は最初の一撃を避ける事」という大原則がデータでも実証されました。
政府は国民に逆のこと(最初は「健康に影響はない」、
4月に入って「健康に注意」)を言っていましたが、問題でした。
ところで、1年の推定被曝量は、
1) 3月に東京にいてマスクをしていなかった人: 2.6ミリ
2) 3月に東京にいてマスクをしていた人: 0.7ミリ
3) 3月に東京から避難していた人: 0.6ミリ
となります。
限度が1ミリですから、3月に東京から離れた人は、
これから0.4ミリ分の放射性物質を含んだ食材を食べる「余裕」があるとも言えます.
わずかな期間ですが、最初が肝心です。
(平成23年5月5日 午前10時 執筆) 武田邦彦