『日本力』という対談集。
編集工学というジャンルを確立し、
知の巨人といわれている松岡正剛氏。
「千夜千冊」というタイトルでブログに書評を書き続けている偉業は圧倒的だ。
その相手が、フォト・ジャーナリストのエバレット・ブラウンさん。
丁々発止、堂々と互角に渡り合う姿には、少なからずドギモを抜かれた。
しかも外国人で巧みな日本語というより、ディープな日本を知らなければ語れない和語。
その遣り取りに、眼を覚まされるほどの、日本への視線、目線に驚かされる。
というより、教えられる。
(「日本力」¥1600〔税別〕 まほろば扱い)
松岡氏をして「平成のフェノロサ」と言わしめた。
知的でもあるが、それ以上に情感豊かな語り口や間取りは、遠い日本人を思い出す。
原風景と言おうか、自分の奥にいたはずの自己に気付かされるほどの説得力。
どんな対談や、どんな書物より、何か心のひだに語りかけてくる深み。
その彼を「知恵の木」の宮本さんが6日にまほろばに連れていらした。
身近に彼に接し、その震えるような繊細な感受性、しかもズドーンと身体のセンターが
グランディングしている霊気に、何か惹き付けられるものを。
地下洞にご案内すると興味を示され、幾枚も写真を撮られた。
何処を撮っても、それ自身の姿態が画になる。
例の如く、この由来を説明すると、驚きの表情をされた。
最後のマグダラのマリアに象徴される「母性」のこと。
そこで、感嘆の声を上げられたのだ。
実は3日前まで、「マリア」をテーマにヨーロッパに渡り、南仏ピレネー麓のルルドに行かれたという。
その辺りの消息や奇跡は「知恵の木」さんのブログに詳しい。
エリクサーにもルルドの水が入っている。
そして、その近くが、サント・マリー・ドゥ・ラ・メールの地、マグダレーナの聖地でもあった。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1514152756&owner_id=7893028
そして北緯43度線上のプロバンス、トスカーナのフィレンツェやミルウォーキーの
発酵ラインに沿って旅したという。
何というシンクロ!!
そして、惹き付けられるように、今此処にいらっしゃる。
かつて、黒船来航の折、各職の民間人も多く乗船したという。
その中に写真家・エリファレット・ブラウンがいた。
彼こそ、エバレットさんの先祖であった。
今、同じカメラを担いで、日本の昔を撮り続けている。
幕末の日本の豊かな自然、たおやかな心、それは異国の人を魅了して止まないものだった。
脈々と引き継がれる精神の系譜と求道。
不思議な体験と縁生で、日本に住むようになった彼。
異国の地で、祖先と合体した視点は二重のフォーカスで、更なる日本の地底を覗き見る。
江戸から明治初期頃のレンズを入手した彼は、
早速、当時の写真箱を再現して、撮す事を思い立った。
そして、名人の手漉き和紙を印画紙に現像させた湿板写真の一枚。
それは現代の被写体でありながら、どこかか茫洋として遠くを見詰める百年以上前のそれであった。
限りなく細密になった現在のカメラ技術。
だが、進化の美名の元に、何かを撮り忘れ、置き忘れたものがそこには映っていた。
白黒の陰影が、より一層それを色濃く際立たせていた。
我々は、今まで何をして来たのだろうか、と静かに訴えている。
確かに、日本人の誰もが指摘できなかった切り口、語り口で、
今エバレットさんは、語り始めた。
それは月並みに言えば「日本再発見」なのであるが、
自分探し、「自己再発見」の旅路を案内してくれている。
これは手に取り、じっくり読むに値する啓発の書でもある。
何時か「知恵の木」さんで催したというフォトレクチャーをまほろばでも開かれる事を。
それは、久々に実りある語りであるはずだ。
そう、エバレットさんこそ、日本の語り部として遣わされた人に違いない。
それが、マリアか八百万の神々かは分からないが・・・・・