「ビジネスマンが銘記すべき言葉」
12月 3rd, 2013 at 15:15牛尾 治朗(ウシオ電機会長)
※『致知』2013年12月号
連載「巻頭の言葉」より
私が経営の世界に足を踏み入れたのは、
父親が亡くなり家業の牛尾工業に
入社したことがきっかけでした。
5年後、不採算であったため切り離された部門を
引き受けて立ち上げたのがウシオ電機です。
昭和39年、33歳の時でした。
以来、今日まで約50年。
この間の経営活動を通じてつくづく実感することは、
経営は職人芸であるということです。
高度成長という追い風にも恵まれ、
おかげさまで当時としては最短の五年で
上場を果たすことができましたが、
そうした体験を通じて、
経営は単に大学で経営学を学んだり、
ITに詳しいからできるといったものではなく、
様々な苦労を重ね、
複雑な人間関係に処する中で培われていく
職人芸であることを私は実感しているのです。
以前読んだ永六輔さんの『職人』(岩波新書)という本には、
そんな私の琴線に触れる素朴で率直な職人さんの言葉が
数多く紹介されており、深い共感を覚えました。
「〈私もいっぱしの大工になりました〉って威張っている職人がいたけど、
〈いっぱし〉というのは、〈いちばんはしっこ〉ということなんだよね。
威張って言う台詞じゃない」
「いいかい、仕事は金脈じゃない、人脈だぞ。
人脈の中から金脈を探せよ。
金脈の何かから人脈を探すなよ」
「職業に貴賤はないと思うけど、
生き方には貴賤がありますねェ」
「目立たないように生きる――昔はそういう考え方でしたよね。
いまは、目立つように生きる、そうなってますわね」
「職人が愛されるっていうんならいいですよ。
でも、職人が尊敬されるようになっちゃァ、オシマイですね」
経営者はもとより、
誰もが銘記すべき言葉ではないでしょうか。