「使命、懸命、宿命」
9月 17th, 2011 at 8:55本日は、ホスピスケアの第一人者として、
これまで二千五百名もの患者を看取り、
生きる意味を追求し続けてこられた
金城学院大学学長・柏木哲夫氏のお話を
ご紹介いたします。
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柏木 哲夫 (金城学院大学学長)
『致知』2008年1月号
特集「健体康心」より
※肩書きは掲載当時です。
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私には自分の人生を動かしていく三つの言葉があります。
それは使命、懸命、宿命という言葉です。
使命というのは、作家の三浦綾子さんが亡くなる前に
テレビの取材で言われていて、すごいなと思った言葉なんです。
三浦さんは、「使命というのは命を使うと書くでしょう」と
おっしゃるんですね。
「私は小説を書くことが自分の使命だと思っているので、
死ぬまで小説を書き続けます。
いま私は体を病んでいますから、
小説を一冊書いたらクタクタになって、
ああ、命を使ったなと実感するんです。
けれども、小説を書くということは
自分にとって命を使うことで、それが使命なので、
その使命を全うしたいと思います」
と。この話を伺って、使命というのは
命を使うということなんだと教えられました。
それからしばらくして、今度は瀬戸内海のある小さな島で
診療所をやってこられた老いた医者のことを知りました。
七十五歳ぐらいですがまだお元気で、
医療に恵まれない島の人たちのために
自分の一生を捧げようと懸命に働いてこられたそうなんです。
その方のことを知った時、懸命というのは
命を懸けることなんだな、と思い至りました。
その方は、自分の医師としての仕事に命を懸けてこられた。
周りの人は、もういいかげんに都会に戻って
のんびりしたらどうかと言うけれど、
自分はここに骨を埋めるつもりです、
それが私の宿命だと思います、と言われるんです。
普通、宿命というとなんとなく
ネガティブな感じがありますけれども、そのお話を聞いて、
宿命というのは命が宿ることなんだと私は思ったんです。
命を使い、命を懸けて、その結果
命が宿るような人生を送る。
そんな生き方ができたらすごいな、と思うんです。