「慶應義塾生を魅了した『論語』の授業」
11月 10th, 2011 at 10:17佐久 協 (作家・元高校教師)
『致知』2011年12月号
特集「孔子の人間学」より
http://www.chichi.co.jp/monthly/201112_pickup.html#pick1
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私は孔子と福沢諭吉がよく似ていると思うんです。
私のような戦後教育で育った西洋的な感覚を持った人間は、
個人と社会を対立させて捉えてしまいがちで、
一人で頑張ったって世の中は変えられないという
意識を強く持っているんです。
けれども孔子も福沢も、
個人が世の中を変えられると信じていました。
孔子は、
「人能(よ)く道を弘(ひろ)む。
道の人を弘むにあらざるなり」
と説いています。
人が道を弘めるのであって、
道が人を弘めるわけではないと。
我われはすぐに政治が悪い、法律が悪いというけれども、
我われ一人ひとりが道徳を実践することで
少なくとも一人分は世の中がよくなる。
社会と個人は対立しないという意識、
これが孔子の思想の基本だと思うんです。
福沢は
「一身独立して、一国独立す」
と説いています。
独立した個人こそが国家を支える基盤になるという考え方ですが、
孔子もまさにそういう気概で世に打って出ました。
いま我われに求められるのはこの気概だと思います。
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● 一日己に克(か)ちて礼を復(ふ)めば、天下、仁に帰す。
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「佐久流現代語訳」
たったの一日でもいいから自らの行動をしっかりと見つめて、
人として納得できる一日を送ってごらん。
そうすれば世の中は確実にその一人分だけ
理想社会に近づくものなんだから。
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● 力足らざる者は、中道にて廃(はい)す。
今、女(なんじ)は画(かぎ)れり。
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「佐久流現代語訳」
力不足の者は、やれるところまでやって倒れればよいのだ。
お前は、やる前から自分で自分に限界をつけているだけだ。
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● 下学(かがく)して上達す。
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「佐久流現代語訳」
身近なことからコツコツと学び、
その積み重ねによって仕事や人生の奥義をきわめよう。