穴大根物語
10月 28th, 2020 at 18:281、今年の対策
今年の漬物大根です。
大失敗でした。
空洞化です。
去年もそれで失敗して懲(こ)りたものですから、原因を解明し避けるために、次の対策をしました。
- 種を代える。「耐病総太り」から「くらま」に。また、同時に両方撒いてみました。
- 撒く時期をずらしてみました。ずらすことで、成長期の違いで結果が異なるか。
- 土地を分散しました、5か所です。土地の条件により、穴が開くかどうかです。
- 肥料の有無。堆肥ヌカを投与する所と全く無肥料で生育を観る。
- 播種後、散水する所としないところ。高温障害を避け発芽を早めるためです。
このように、ほぼ条件の違う所で、結果を見てみました。
結果は、みな一様に空洞化がありました。酷(ひど)い所とそうでないところがありますが。
これは、病害や虫害など生物的要素でない、温度、光、土壌の化学性、物理性などさまざまな環境要因によって、正常な生長・発育が行なわれない生理障害である訳です。
2、その原因
そこで、考えられるのは、今夏の異常気象、高温です。
空洞化の主な原因が、この高温障害と通説化されているからです。
今夏は、熱中症で家内がやられるくらいですから、野菜にとって相当のストレスとダメージがあったと思います。
しかも、導入した「くらま」が生育中期後期に高温に弱く、生理障害、病害虫に弱くなるらしいのですが。
しかし、うまく行っている所もあるはずです。
ただ、仁木余市は果樹農家、施設園芸農家が大多数です。
気候と言えば、毎日バイトの高田さんが札幌を出る時、土砂降りの雨なのに、余市に入ると不思議と止んでいる、と何時も言われていました。
おそらく小樽以東と以西では隣同士でも全く違うのでしょう。
雨が少なく、高温傾向にあるのがこの周辺、果樹栽培が自然と盛んになった自然条件なのだと思われます。
基本的に、蔬菜より果樹が最適なのでしょう。
ですから北海道の名産地として昔か
ら、引き継がれて来たのだと思います。
それと粗収入が、野菜と果物では、反当りの差が当然つく訳です。
仁木で野菜を作っているのは、勿体ないでしょう、とよく言われます。
3、原因さらに
話を戻します。原因はそれだけでしょうか。
最近、ハウスを建てました。
その時、暗渠を掘るため1mほど掘削しました。
それを見て、いかに重粘土層かを思い知らされたのです。
それと、相当の石が畑に紛れ込んで、いくら毎年石を除いても耕すごとに、土中から石が飛び出します。
それでは大根が変形してしまいます。
大根に輪っ子の線が、下からほぼ中間層まで続いています。
そのような大根は、間違いなく空洞化しています。
「大根十耕」と言われるように、それを防ぐ為には、
相当深くロータリーをかけて深堀せねばなりませんが、
それをすると下層から石がまた上に浮き出てきます。
ロータリーの爪がすぐ摩耗して、すぐ取り替えないといけなくなります。
その証拠に、大根の首が相当上に出ていて、下から押されているようにも見えます。
刺さって行かない、降りていけない訳です。
輪っ子一筋一筋が、大根の悲鳴なんです。
大根の肌は普通、スーとしてきれいなものですが、この筋入りが致命的です。
土寄せ培土が十分すべき時間が押しやられたのも一原因です。
そして、粘土層で水はけが悪いと、どうしても水分が溜まりやすく、高温で膨張して細胞破壊が起こり、溜水現象で空洞化が起こるのかな、とも推測します。
4、根物は不向き!?
結論から言うと、この地域には、根物は不向きであるという学びです。
ゴボウは伸びずに塊になり、山芋は掘るのに一苦労どころか三苦労ぐらいします。
適地適作と言いますが、少し無理かな、との思いに至りました。
ぶどう、リンゴ、サクランボなどの樹木は、堅くて丈夫なので、土の間隙を縫って根を張りますが、軟弱な根菜はそうはいきません。
以上の、考えを総合して、今後の方針が立てられそうになりました。
穫るたびに、ガッカリしながら、収穫しているのですが。
日々、だんだん大根が太り出すと一昨年の「太大根物語」が蘇ってきました。
http://www.mahoroba-jp.net/about_mahoroba/tayori/topix/topix2018/topix2018_12/2_daikon_story.pdf
あの根太い大根。
大人気で、未だに「あの大根は旨かった、もう一度食べたい!」との語り草になっています。
今年は「穴大根物語」。
笑えません。何万本ですから。
絶望の中で、少しは希望もないでしょうか。
5、「くらま大根」は、京野菜!!
そして最後、食べてみて、びっくり!!
「こんな大根、今まで食べたことがない!!」と言うほど、旨かったんです。
恐らく、この地で誰もが食べている大根は「耐病総太り青首」系に限られていますね。
由来
「くらま」は、今ではほとんど作られなくなった京都左京区の京野菜の地大根「鞍馬大根」で、富士山麓の朝霧高原で復活させた古い在来種でもあるんです。
大根の中でも一二を争うほど品質が良く、トロリとした舌触りは絶品。
繊維質が少なく、葉っぱには毛がなくツルツル、非常に女性的な肉質。そして、萎黄病(イオウビョウ)などの病気に強い男性的な性格も持ち合わせ。
作りにくい(確かに難しかった)が、これほど品質極上な大根もないという事です。
作り方
今更ながらですが、反省。
【太りがとても早いのであわてて蒔く必要はない】ということで、道理で太大根が多い。早蒔きは割れやすいという事です。今までのお盆過ぎより、チョット遅らせては。
【肥料は少なめ。他品種の1/2~1/3の元肥で十分。肥料が多いと割れやすい】確かに、無肥料の畑は、正品率が高かった。でも、17年物もの耕作放棄地だったので、長年堆積した雑草で窒素過多になり易いので、空洞化になったのでは。成程、そうなるのか、合点!
後半適期に0-1テストして、ミネラルをやれば、バランスとれたかも。でも全然時間の余裕がなかった。
【雨の日や、朝や、水分の多いときに乱暴に収穫すると割れやすい】確かに「パリン!!」と弾けるように、元気に割れるんです。漬物大根時期は、特に長雨が続くから扱いに気を付けねば。
6、意外にも、好評
確かに、甘くて、蕩(とろ)けるような旨味は、格別で言い様がないです。
「これは、やった!!」とばかり、少し気を取り直しましたが。
折れた心を、何とか立て直そうとしています。
聞く所、店では大好評で、「柿や梨のような味わいで絶品!」
との専らの評判で飛ぶように売れているらしい。
日報に、こんな報告がありました。
「配達発送の電話注文で『まほろば大根は、やっぱり美味しいね』と、再度ご注文頂くことがあり、とても嬉しく思います。我が家でも、例年通り、サラダ、煮物、切干大根と美味しく戴きます。ありがとうございます」(永畑・記)と。
これを聞いて、こちらがビックリ!!
何とも、《尻尾をカットして見栄えがしないから敬遠されるだろうな》、《苦情や廃棄が多いだろうな》、《バックヤードでスタッフも苦労しているだろうな》と思っていた矢先。
却って、今は一本の大根では多過ぎるらしい。
手頃で丁度、とてもイイらしい。特に独身者には。
物事は、どっちに転ぶか、解らないものですね。
7、店から助っ人
これから、三面あるこの海原のような大根畑をどう処理するか。
悩みながら、次の手を考えている所に、今朝、店から福田副店長はじめ4名の助っ人。(一面一町歩を収穫しないで放置のまま捨てようか)と思っていたので、元気をもらいました。ありがたかった!
遅く撒いたところは、わずかながら正品率もあり、漬物大根として出せそうです。
少しは胸を撫で下ろしました。
8、店頭では
今、このように販売してます。
① 下の先をカットして空洞を調べるので、「カット大根」として出します。
② 葉付きは大丈夫な正品なのですが、下先を少しカットしていますのでご了承ください。
③ もし、それでも空洞化があったら、お申し出ください。ご面倒でも、ご希望に沿って、代替品を出すか、返金させて戴きます。
以上、大変ご迷惑をお掛けし、申し訳なく思いますが、お付き合いいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
来年、再挑戦するかどうか、悩むところですが、お客様のお声に添いたいと存じます。