「バレー界の名将・松平康隆氏の飴と鞭論」
1月 17th, 2012 at 9:18 『致知』1981年7月号より
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現代の人の中では、亡くなりましたが、
愛知揆一さんという政治家に一番影響を受けています。
愛知さんが教えてくれたことに、
立体史観というのがあります。
どういうことかというと、視野の狭い人は点でしか判断できない、
ちょっと視野を広くすると線になり課長クラスの仕事ができる、
さらに広くすると面になり、大会社の部長クラスだ。
面を上下へ延ばすと円筒形になる。
そうなると樋口清之さんではないが、
梅を見ただけで「梅ぼしと日本刀」という本が書けるようになる。
バレーボールで世界一になろうというなら
最大の円筒形になれというのです。
とくに立体的に過去を勉強しろ、
エジソンもキュリーも学びなさい、
バレーと関係ないと思ってはいけないというのです。
それ以来私は円筒形を続けるためにも、
努力して交友関係を広げています。
スポーツ界で私はいちばん交友は多いと思います。
円筒形がなぜバレーに関係があるかというと、
それがアメになるのです。
バレーの選手が、例えば図書館へ行って勉強したいという、
あるいはなぜポーランドにワレサという新しい指導者が
出てきたかなどといいだすと、
そんな暇があったら練習しろというのが、
バレー馬鹿のいうせりふです。
私はそうはいわない。
お前がポーランド問題に関心があるのなら、
きょうの練習三時間やるよりも、新聞社の編集委員に会って来い、
俺が紹介してやろう、といいます。
そうして話を聞いてやる。
そしてポーランドはそういうことになっているのかというと、
コートの上では私にしごかれている選手が、この問題については
監督より上なのだという気持ちになれますよ。
これはおだてです。
ほめる材料を与えるわけです。
しかも監督が馬鹿にされることにはなりません。
むしろそういう示唆を与えてくれたことに対する尊敬というか、
情を感ずる、そういうプラスがあるのです。
アメというものを、私はそこまで広く受けとめています」
企業の中で英語教育をやらせるのもアメだし、
専門外のセミナーに行かせるのも、
アメを心得た指導者のやることです。
そんな時間はもったいない、
自動車の一台も売ってこいというのは、点か線の発想です。