「自己改革の6つのキーワード」
3月 10th, 2012 at 8:49 『致知』2012年4月号
特集「順逆をこえる」より
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多くの経営者が近年の経営学を勉強されて
効率化を図られているのは非常にいいことだと思います。
私はこれを合理主義の経営と名づけて、今日まで取り組んできました。
ところが職場で働く人間を大事にしたり、
モチベーションを上げていって
実力以上の力を出してもらうという人間に立脚した経営、
これを人間主義の経営と言っていますが、
これがいまの経営者は非常に弱いように思うんですね。
合理主義を追求して、例えば10部門中9部門までが
赤字だった長崎運送の場合、1部門を残して
あとは全部切り捨てればよかったかといえば、
そんなことないですよ。
本当は再建できる要素があるかもしれないのに、
赤字だから切り捨てろというのではあまりに短絡的です。
ですから私の経営の基本にあるのは、
一つが合理主義に則った業務改革・業務改善、
そしてもう一つは人間主義に基づいた意識改革。
どれだけ合理的・効率的に考えていいことばかり言っても、
元気の出ない人がそれを実行しても効果は上がりませんよね。
私は社長として就任する前の日曜日に
全社員320名を集めて、
経営方針発表会を開きました。
そうしたらいままで社長の顔すら見たことがない
という社員が半分近くいたんですよ。
そんな会社では、社長がいくら発破をかけても伝わりませんよね。
私はその場で全員に訴えかけました。
きょうから会社が変わっていくから、
皆さんも意識を変えてくれよと。
「明るく、
元気に、
前向きに、
いまやる、
頭をつかってやる、
必ずやる」
これは私が掲げた自己改革の6つのキーワード。
もちろんただやろうじゃないかと
精神論を唱えるだけではなく、
具体的な再建計画も全員にお伝えしました。
会社が危機的状況に置かれていることすら
知らない社員もいましたから、
ここで全員の意識を一つにまとめて一丸となって頑張ろうと。
すると、社員の目の色が変わりましたね。
懇親会では舞台から降りて
社員一人ひとりと握手して回りました。
興奮する社員もいれば涙ぐむ社員までいて、
それはもう大変な盛り上がりでした。
320人もいれば本当にいろんな社員がいます。
でもね、そういう人たち全部をまとめて
一つの方向へ引っ張っていくのが
社長の一番重要な役割だと私は思っているんですよ。
社員もまた会社でそれぞれ役割を担っているわけですから、
私はオーケストラでいう指揮者みたいなものだと思います。
その日から私は一気に勝負をかけました。
なんせ十年間だらだらしていた会社だから、
様子を見ながらなんて言っていたら
またすぐ元の意識に戻っちゃう。
最初の3か月が土台づくりの勝負だと思って、
もう朝から晩まで
「これじゃあかん」
「君の考えはどうなんや」
と叫び通しでしたね。
それまでぬるま湯みたいなところで、
見せかけだけの仕事をしている人が多かったから、
実際320人の社員がいても
戦力的には7掛けくらいで見ていましたよ。
つまり224人。
でもね、もし彼らがやる気になって
普通の人の1,2倍働くようになったら
384人分の戦力になるでしょ。
そうしたら同じ人員のはずが、
モチベーションが上がっただけで
新規に160人採用したのと同じことになる。
だからいかに社員を元気にさせることが
重要かってことですね。
一人を単に一人と勘定しているようでは、
本当の会社の実力というものは見えてきません。