「汗のなかからホンマもんの知恵が出るんやで」
9月 27th, 2011 at 9:16
江口 克彦 (PHP研究所副社長)
『致知』1997年5月号
特集「リーダーシップの本質」より
※肩書きは掲載当時です。
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松下幸之助の言葉に
「風が吹くときは絶好や。凧がよう上がる」
というのがあります。
あるいは「短所は長所、長所は短所」とも言っています。
たしかに、考え方、見方によって物事は180度転換します。
だから、経営者が業績の悪さを景気のせいにしてはいけないのです。
松下が
「好況よし、不況なおよし」
と言っているのもそのことです。
松下電器がそうでした。
松下幸之助が元気だった頃は、
不況のときにむしろ取り引きが拡大しているのです。
なぜかと言いますと、
不況になると誠実で確実な企業と
取り引きをしたいと思うのが人情です。
好況のときにいくらいい成績をあげていても、
お客様のことを考えず、会社のこと、
自分たちのことばかりを考えていた企業は、
不況時には相手にされなくなります。
私が30歳になるかならないかの頃、ある経営者から、
「知恵ある者は知恵を出せ。
知恵なき者は汗を出せ。
それができない者は去れ。
それがオレのモットーだ」
と聞かされたことがあります。
そのことを松下に話すと、
「その会社は潰れるな」
と言いました。そして、こう続けたのです。
「わしなら、まず汗を出せと言う。
汗のなかから知恵を出せ、
それができない者は去れと言う。
汗のなかからホンマもんの知恵が出るんやで。
生きた知恵は汗のなかから出るもんや」
予言通りその会社は倒産しました。
そのように、汗を出すこと、
ほんとうの汗を流すことに徹すれば、
不況どこ吹く風となるのかもしれません。