醗酵の極み!猛毒のふぐ卵巣が・・・・・
5月 2nd, 2012 at 18:17『醗酵仮面』こと小泉武夫農大名誉教授の講演は、
これまで相当数拝聴してきたが、事あるごとに話題を提供する
端緒というか結論というか、兎にも角にも、最大級に絶賛するのが、
「ふぐの卵巣糠漬け」で、これは醗酵史上、最大の出来事であり、奇跡なのだと。
その大本殿、石川県の『あら与』さんの荒木敏明社長と電話で話が弾み、
その商品、ふぐの卵巣を送って頂いた。
怖いもの見たさとはこの事か。
手に取っては見たものの、きっと塩辛いだけのもので、
期待外れに終わるであろうと、恐る恐る口に運んだ。
ところが、どっこい!『これは!うまいぞ!!行けるぞ!!!』と唸る。
卒倒しそうなくらい、う・ま・か・っ・た!!!!!!!!!
これには、言葉は要らぬ。
これは、仕入れるより他、手はないとばかりに仕入れた次第。
以下、小泉博士の解説から、やんわりと導入。
しばし、文言で悶絶あれ。
毒抜きとアク抜き 小泉武夫著 『発酵」から
フグ卵巣の毒抜き
まず日本にある世にも不思議な発酵、フグ卵巣の「毒抜き」から述べよう。
石川県金沢市周辺の美川・大野・金石地区や、能登地方でつくられている
伝統的発酵食品に「フグ卵巣の糠漬け」がある。
有毒な原料を用いる点できわめて特異であり、その有毒物質を微生物によつて無毒化し、
食品にするという点で奇跡的である。
この地区は明治初期よりフグの糠漬け製造が盛んで、
マフグ、ゴマフグ、サバフグといつた猛毒フグがその原料となってきた。
毒のない肉味を糠漬けするのならわかるが、
ここでは猛毒を持つ卵巣を糠漬けにしてしまうのだからまさに驚嘆に値する。
フグの卵程は、猛毒テトロドトキシンがあるのは周知の通りで、
大型のトラフグの卵巣一個でおよそ20人を致死させるというから猛烈なものである。
ところがこれを醗酵によって解毒し、食べてしまうという発想は世界に他例はなく、
生活の知恵から生まれたものとはいえ強烈である。
まさに漬物王国日本ならではの発想と知恵から生まれた発酵食品である。
その製造法はまず、卵巣を30%以上の塩で塩漬けし、そのまま半年から一年間保存する。
塩漬け後、2~3ヵ月で塩を替えて漬け直すこともある。
一年ほどすぎてから卵巣を取り出し糠に漬け込むが、この際、
少量の麹とイワシなどの塩蔵汁を加える。
こうして重石をして二年間以上発酵、熟成させ、このまま糠漬けとして、
あるいはさらに酒粕に一カ月ほど粕漬けとして出荷する。
一般の魚の糠漬けに比べて使用塩量が多く、発酵期間も数年かけるが、
これは昔から「毒を消しすため」と伝え継がれてきたためであるという。
漬け込む前にあった猛毒は、製品からは全く消えてしまい、
これを食べての食中毒例は皆無であるばかりでなく、
今日では金沢市の名物土産となって売られている。
この毒抜きのメカニズムは、まず塩漬けの期間で毒の多くが卵巣外に流出し、
次に糠漬げの期間で、残留した毒が乳酸菌や酵母を中心とした発酵微生物の作用を受けて分解され、
解毒されるものであることがわかった。
大根やきゅうり、ナスなどを含めて、発酵中の糠みそにはその1グラム
(大体親指のツメほどの量)中に数億個の微生物が活発に生活しているのである。
彼らにかかつたら、あたって恐いフグでも弾を抜かれた鉄砲のようなものになってしまう。
『ふぐの子 ぬか漬』 ¥840(税込)
『ふぐの子 かす漬』 ¥1,050(税込)
『笹干しふぐ糠漬け』 ¥630(税込)
『ふぐかけ Fー1醤油』 ¥840(税込)