「人生はあなたに絶望していない」
10月 8th, 2011 at 9:34
永田 勝太郎 (財団法人 国際全人医療研究所理事長)
『致知』2011年11月号
特集「人生は心一つの置きどころ」より
http://www.chichi.co.jp/monthly/201111_pickup.html#pick3
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これは十三年前のことですが、ある時大病を患って、
突然歩けなくなってしまったんです。
何だろうと思っているうちに立つことも
できなくなって寝たきりになり、
ベッドのそばにあるトイレにすら
自分の力では行くことができなくなりました。
薬の副作用のため、末梢から筋肉が萎縮し、
力が抜けていくという病気でした。
そういう状況の中で、頭の中では何を考えていたかというと、
人間は死を受容できるのかということでした。
自分がまもなく確実に死ぬと思っていましたから、
毎日毎日天井を見ながらそのことばかりを考え続けました。
ただその時に、あの世はあるかということは思わなかった。
自分がもし万が一生きられたらって、いつも思っていましたね。
つまり、死んだらどうなるかということよりも、
生き延びることができたら、自分の人生を
何に使おうかと考えたわけです。
だから僕も楽観的だったと思うんですが、
散々悶々と考えた挙げ句に出た結論は、
俺は死を受容できないということでした。
受け入れられないから、もし死んだら化けて出るだろうと(笑)。
だったら生きるしかないだろうと思うようになったんですね。
ところが病状は日に日に悪化し、
ペン一本すら重たくて持てない。
眠るたびに酷い悪夢に襲われ、全身汗だくになって目が覚める。
僕が倒れたのはフランクル先生が亡くなった
翌年の一九九八年だったんですが、
僕はとうとう彼の奥さんにこんな手紙を書きました。
「エリーさん、さようなら。
僕はいま死ぬような大病を患っているんだ。
もう二度とウィーンの街を歩き回ることもないだろう。
これから先生の元へ行きますよ」。
そしたらエリーさん、慌てて返事をくれましてね。
「あなたがそんな病気でいるなんて、とても信じられない。
私は医者ではないから、
あなたに何もしてあげることはできない。
けれども生前、ヴィクトールが
私にいつも言っていた言葉をあなたに贈ろう」。
この言葉が僕を蘇らせてくれたんですね。
「人間誰しもアウシュビッツ(苦悩)を持っている。
しかしあなたが人生に絶望しても、
人生はあなたに絶望していない。
あなたを待っている誰かや何かがある限り、
あなたは生き延びることができるし、自己実現できる」。
この手紙を僕は何百回も読み返しました。
そうして考えたのは、いまの自分にとっての生きる意味とは
何だろうということでした。
そして考え続けた結果、
「あなたを待っている誰かや何か」の焦点は
私にとっては医学教育であり、
生きる意味は探せばちゃんとあるのだと感じたんです。
それから私はよし、と気合いを入れ直してリハビリに専心し、
毎日鍼治療も受けました。
さらに漢方薬や温泉療法なども行って、
二年後には奇跡的に職場復帰まで果たすことができたんです。
(エリーさんの)あの言葉がなかったら
僕はいまここにいませんよ。
医療もまさに心一つの置きどころで、
患者の側が自ら治ろうという気概を持たなければ
何も起こらない。
僕はこれを傘に例えているんですが、
傘には布と芯の部分がある。
布の部分は医療者や家族であり、
芯の部分が患者さん本人ですよ。
これがなければ、傘の用をなさないですよね。
僕はこれをアンブレラ理論と呼んでいますが、
治療には絶対に必要なものと考えています。
10月 11th, 2011 at 1:04 PM
自然療法の学校の授業、Philosophy of Natural Therapeutics (自然療法哲学とでもいいましょうか)で、「おおもと」(Source)とのつながりが、この世界での存在を可能にしている、と学びました。そのつながりのレベルが人を病にもし、元気にもする、と。断たれたあるレベルのつながりを回復させるものは、人とのつながりであったり、ホメオパシーやフラワー・レメディーであったり、何らかの療法であったりするのでしょう。それらは、存在そのものが本来もっている「おおもと」とのつながりを取り戻すためのきっかけを与えるにすぎません。存在するものは、本来、存在するための力(自然治癒力もその一つ)を持っている、ということなのでしょう。
「自ら治ろうとする気概」というのも、やはり、本人がどれだけ「おおもと」とのつながりを持とうとしているか、ということだと思います。
人と接するときはいつでも、その人々のもつ「おおもとへのつながり」を思って、「おおもと」でつながっていけたら、と思います。