「才能を私物化してはならない」
10月 3rd, 2012 at 17:50稲盛 和夫 (京セラ名誉会長・日本航空名誉会長)
『致知』2012年10月号
特集「心を高める 運命を伸ばす」より
http://www.chichi.co.jp/monthly/201210_pickup.html
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私は様々な方のおかげで若い頃に京セラを
軌道に乗せることができましたが、その過程で
「私の技術をベースに創業し、私が夜も寝ないで経営してきた会社だ」
という、一種の驕りが出たことがありました。
しかし、すぐに考えを改めて、
「才能を私物化してはいけない」と常々自分に言い聞かせてきたんですね。
京セラやKDDIを立派な会社にして、
JALの再建も果たして、確かに私には
少しは経営の才能というものがあったのでしょう。
しかし、そういう才能を私が持っている必要があったのだろうかと。
この社会は一つの演劇を演ずる劇場のようなものだと思っています。
劇団には主役を演ずる人、脇役を演ずる人、
大道具、小道具、衣装の準備をする人、
様々な役回りがあるわけです。
現代において、京セラやKDDIをつくる人は
必要だったかもしれないが、その才能は
別に私が持っている必要はなかった。
同じような才能を与えられた人がいれば、
JALの再建はその人物を中心に行われたと思うのです。
私はたまたまこの世界の創造主から才を与えられ、
役割を与えられた。
ならば、その才を自分のために使って
「俺がやった」などと自惚れてはならない。
やはり従業員のため、世のため人のために使う。
それがリーダーだと思い、これまでやってきました。
最近ことに強く思いましてね、夜、寝付いたらいつも
「こんなに素晴らしい人生を与えていただいたのだから、
なんとか世の中にお返ししたい」と思っているんです。
盛和(せいわ)塾ではずっと
「心を高める 経営を伸ばす」というテーマを掲げていますが、
これは経営だけの話ではないと思っています。