まほろばblog

「科学研究の2つの使命」

10月 10th, 2012 at 9:21

      山中 伸弥 (ノーベル医学生理学賞受賞者・
              京都大学iPS細胞研究所所長)

              『致知』2012年11月号
               特集「一念、道を拓く」より
  http://www.chichi.co.jp/monthly/201211_pickup.html

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僕も科学研究には極端に分けて2つあると思うのですが、
1つはいま川口先生が言われた、
すでに分かっているようなこと。

誰かが「警視庁の調査みたいだ」と言いましたが、
犯人は絶対にいることが分かっていて、
問題はいかに早くその犯人を見つけ出せるか、
しらみ潰しで探していく研究の仕方ですね。
これはこれで大切です。

片や昔、大航海に乗り出されたように、
そこに何があるか分からないけれども、
行かないわけにはいかんでしょうと。

行ってみたらきっと何かがある。
それが役に立つか立たないかなんて分からないけれども、
行くこと自体に価値があると。

僕はその両極端、両方ともが非常に大切だと思うんです。

【川口 山中先生の場合は、その発見が
    利用にも繋がっていくところが素晴らしいですね】

確かに、僕たちも最初は大航海型で、
ともかく乗り出そうという感じで行ったのですが、
たまたま宝の山のようなものが見えてしまって。

すると今度はそれをいかに完成させるか、
いかに早くゴールへ辿り着くかが問題になっていて、
iPS細胞ができる前後ではまるで別の仕事のようになっています。
いまはもう完全に「開発」の段階ですね。

       (略)

特にいまは震災の影響もあって、
国民への理解をと言われると明確なゴールを示さないといけない。
事業仕分けもあって科学技術予算はますます圧迫されていますし。
iPS細胞は図らずも開発の段階へと入っていきましたが、
でも、それだけをやっていたのでは次がついてこない。

新たな発見のためには未来への投資が不可欠です。

【川口:おっしゃるとおりです。出口の見える研究、なんてよく言われますが、
    あんまり近い出口ばかりを見過ぎていますよね】

はい、その両方が絶対に大切です。
10年ほど前にはiPSのアの字もなかったですし、
僕らも出口なんか全然見えていなかった。

でも科学研究の場合、どこから芽が出てくるか分かりませんから、
水はちゃんとやっていかないといけない。
したがっていまの2つのことを同等に議論したり、
同じ天秤にはかけられないと思うんです。

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