天才建築家・ガウディの遺志を継承する
11月 6th, 2012 at 9:47彫刻家・外尾悦郎氏の幸福論
『致知』2012年12月号
特集「大人の幸福論」より
└─────────────────────────────────┘
◆ この34年間、思い返せばいろいろなことがありましたが、
私がいつも自分自身に言い聞かせてきた言葉がありましてね。
「いまがその時、その時がいま」というんですが、
本当にやりたいと思っていることがいつか来るだろう、
その瞬間に大事な時が来るだろうと思っていても、
いま真剣に目の前のことをやらない人には決して訪れない。
憧れているその瞬間こそ、実はいまであり、
だからこそ常に真剣に、命懸けで生きなければいけないと思うんです。
◆ 人は答えを得た時に成長するのではなく、
疑問を持つことができた時に成長する。
◆ 仕事をしていく上では「やろう」という気持ちが何よりも大切で、
完璧に条件が揃っていたら逆にやる気が失せる。
たやすくできるんじゃないか、という甘えが出てしまうからです。
◆ 本来は生きているということ自体、命懸けだと思うんです。
戦争の真っただ中で明日の命も知れない人が、
いま自分は生きていると感じる。
病で余命を宣告された人が、
きょうこの瞬間に最も生きていると感じる。
つまり、死に近い人ほど生きていることを強く感じるわけで、
要は死んでもこの仕事をやり遂げる覚悟が
あるかどうかだと思うんです。
◆ 当たり前のことを単に当たり前だと言って済ませている人は、
まだ子供で未熟です。それを今回の震災が教えてくれました。
本当に大切なものは、失った時にしか気づかない。
それを失う前に気づくのが大人だろうと思うんです。
………………………………………………………………………………………………
(編集部より)
不世出の建築家アントニオ・ガウディが設計した
「サグラダ・ファミリア教会」。
着工から130年の歳月を経たいまなお未完のまま工事が続く
壮大な聖堂の建設に、日本人として参加してきたのが
彫刻家・外尾悦郎氏です。
外尾氏に初めてお目にかかった時、
全身から漲る強烈なエネルギーに圧倒されました。
「この仕事がうまくいかなければ明日はない」という過酷な世界の中、
一回一回、「これが最後の仕事だ」という思いで
真剣勝負をし続けてこられた方だけが持つ迫力ではないかと思います。
ぜひ本誌のインタビュー記事から、
外尾氏の“熱”を感じ取ってください。
http://www.chichi.co.jp/monthly/201212_pickup.html#pick3
……………………………………
○サグラダ・ファミリアとは?
……………………………………
正式名称はサグラダ・ファミリア贖罪教会。
聖母マリアの夫ヨセフを信仰する教会として1882年に着工。
翌83年、前任者が辞任したことによりガウディが引き継ぐこととなり、
没後その遺志は弟子たちに委ねられた。
設計図が残っていないため、ガウディの建築思想を想像する形で
建設は進められている。
完成すれば170メートルを超す「イエスの塔」など
18の塔と3つの門を持つが、完成するのは
数十年後とも数百年後ともいわれる。