まほろばblog

幻の魚「イトウ」

11月 6th, 2012 at 19:02

 

「すずき」さんは、時々うちに寄ってくれるのですが、

「いとう」さんは、初めてで、みな大慌てで、出迎えました。

何せ「まぼろし」さんですから、みな興味津々でした。

市場でも持て余したのか、私にお鉢が回って来て、

「まほろばさん、買ってーーーー!」と絶叫され、

止むなく哀れみの情を抱いて、仕入れた次第。

「まぼろし」とはいえ、どう食べるのか、みな意外と知らない。

それで、いろいろ調べるととんでもない魚だったのだ。

千島・樺太からニセコの尻別川を南限として、東北に生息していた種は絶滅。

しかし、道内ものだけは、鮭鱒と同じ、降海性をもって海に出るというから不思議。

そしてホッチャレみたいに、一回の産卵で死せず、何度も産卵を繰り返すというから驚き。

それも、雌雄とも相手を変えるというから、何とも・・・・・・のはなし。

それに巨大化して最長2.1mを記録したというから雑食でへびやねずみさえ喰らうという。

個体数は年々減少し、「キャッチアンドリリース」で釣っては放流するのが励行されている。

皮は固く、衣服や履物にも利用されていたという。

道理で、サバキの竹さんが「皮が硬いので、全部引きますよ」と今朝一番に言っていたっけ。

かように、生息数の減少はの第一原因が、河川の直線化と言われている。

蛇行した川の氾濫が大地を肥沃にし、生物種の数を豊かにした。

しかし、コンクリートによる護岸工事は、確かに災害による恐怖を遠のかせた。

しかし、目に見えぬ豊饒な生態系は狂い先細りしていった。

我々は、大切な何かと交換条件に、どうでも良い物を手に入れて喜んだのではあるまいか。

その末路が、今日の日本であり、世界であるのだろう。

郷里恵庭では、茂漁川の護岸を撤去し、昔ながらの緩やかな流れに戻し、草木を繁茂させた。

その結果、驚く程の失われた生命が、どこからともなく蘇って来たという。

毎秒何種類かの品種が、この地上から消えている。

イトウも、いつまでも北海道の河川に戻ってきて欲しいと願うばかりだ。

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