生きる力と笑顔を生み出すのは・・・・・・
12月 12th, 2012 at 10:12生きる力と笑顔を生み出すのは
母の手のひらだった
占部 賢志 (中村学園大学教授)
『致知』2013年1月号
特集「不易流行」より
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大阪大学医学部の先生で玉井克人さんという方がいます。
玉井医師は「表皮水疱症(ひょうひすいほうしょう)」の専門家で、
この病気は全国で数百名ぐらいの難病中の難病といわれています。
通常、私たちの皮膚は三層から成っていて、
それがくっついているそうですが、
「表皮水疱症」はそれが不十分で、
夜、寝返りを打つだけで、皮膚がずれて破れてしまう。
ですから、いつも水疱ができるので、
それを一つひとつ専用の針で潰し、
軟膏を塗らねばならないそうです。
これを朝夕二回やるんです。そういう難病です。
玉井医師はこの研究と治療をずっと続けてきて、
信じられない現象に気づくんですね。
それは、この難病を背負っている子供たちが一人の例外もなく、
いつもみんな笑顔で実に明るいというのです。
あれだけの難病、しかも毎日激痛と闘っている。
いつ治るかも分からないのに、なぜこんなにも明るく、
逆にこちらが癒されるような笑顔を見せてくれるのか、
不思議でしょうがなかった。
ところが、その理由が分かったそうです。
それは、母と子の触れ合いによって活性化される
「スキンシップ遺伝子」
の働きなのだというのです。
要するに彼らは生まれた瞬間から
毎日毎日、朝夕二回、母が水疱を潰して、
全身に手のひらで軟膏を塗ってやるでしょう。
その母の手のひらが遺伝子に働きかけ、
情動の発達を促して、
あの優しい笑顔を生み出していたというのです。
それを玉井医師は「スキンシップ遺伝子」と呼ぶのです。
私はこの玉井医師のレポートを読んだ時、大変感動しました。
難病やハンディという大変な逆境を背負っていても、
人を癒し、明るく世の中を生きる力を生み出すのは、
母の手のひらなんだと。
目に見えぬ母の愛情には、
それだけの力を与えることが科学でも証明されたということです。