「人格の根っこ」
12月 15th, 2012 at 9:31大平 光代 (弁護士)
『致知』2013年1月号
特集「不易流行」より
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現在、ダウン症のお子さんを育てられている
大平光代さんは、子育てに『論語』を用いているそうです。
現在は、『論語』に関する本を出されている大平さんが
そこに込めている思いとは?
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これは以前、強盗致傷罪で担当した少年の話です。
彼は小さい頃、お父さんについてタバコ屋さんに行きました。
その時、五千円札一枚出したところ、
おつりとして八千円と小銭が返ってきた。
「お父さん、おつり多いやんか。
おばちゃん、間違えてはるで」
と言うと、お父さんは彼を殴りつけ、
「余計なことを言うな。黙ってたら分からへん」
と言い放ったそうです。
ちなみに、お父さんのこの行為は
つり銭詐欺で刑法上の罪に問われます。
この経験が少年の人格の根っことなって、
後に彼は万引きを繰り返し、
最後はひったくりを行って被害者が怪我を負ったために
「強盗致傷罪」に問われました。
お父さんは
「おまえには十分に小遣いを与えていたはずだ」
と怒りをぶちまけていましたが、
もともとは「バレなければいいんだ」と、
自分が五千円をごまかしたことがきっかけなのです。
このお父さんも一流企業にお勤めのエリートサラリーマンでしたから、
もしかすると『論語』の言葉は知っていたかもしれません。
『論語』の心とは、
目に見えないものを感じる心だと思います。
誰が見ていなくても、お天道様が見ている。
「そうやなぁ、おつり返しに行かなあかんな」
と言って返していれば、
この出来事は少年にとってまったく別の人格の根っことなったと思うのです。