「王監督から学んだプロのあり方」
2月 5th, 2013 at 9:12小久保 裕紀 (元福岡ソフトバンクホークス選手)
『致知』2013年3月号
特集「生き方」より
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僕がプロで成功した一番の要因は
王監督との出会いだと思っています。
亡くなられた根本陸夫監督の後を引き継いで
ダイエーの監督に就任されたのは
僕がプロ二年目の時でした。
その出会いからトータルで十五年、
王監督の下でプレーさせてもらったんですけど、
僕はその教えを忠実に守ることを心掛けてきました。
王監督からは例えば「楽をするな」って教わったんですよ。
「練習の時に楽をするな。練習の時に苦しめ」と。
練習は普通センター返しが基本と言われていて
大方の選手はそうしているわけですけど、
僕の場合は王監督から
「ボールを遠くに飛ばせ。
それにはバットを振った時、
背中がバキバキと鳴るくらい体を百二十%使え」
と言われました。
皆、練習の時は適当にやって、
試合で百%の力を発揮しようとするのですが、
これは間違いだということがいまはよく分かります。
王監督のことでは強く印象に残っていることがあります。
怒ったファンからバスに卵をぶつけられたことがありました。
忘れもしません、九六年五月の日生球場での
公式戦最終日です。
負けが続いていて、怒ったファンの方が
たくさんの生卵を僕たちのバスに投げつけられたんです。
卵が飛び散って外の景色が見えないくらいだったのですが、
そんな時でも王監督はどっしり構えて絶対に動じられなかった。
後ろをついていく人間としてリーダーが
ここまで頼もしく思えたことはなかったですね。
帰ってからのミーティングでも
「ああいうふうに怒ってくれるのが本当のファンだ。
あの人たちを喜ばせるのが俺たちの仕事なんだ。
それができなければプロではない」
とおっしゃいました。
僕はまだ人間が小さいですから
「あんなやつらに」とついつい思っていたのですが、
それだけに絶対に言い訳をしようとしない
監督の姿には学ばされました。