まほろばblog

「どん底で私を救った二つの聖句」

3月 2nd, 2013 at 9:37
 山崎 比紗子(ヒサコヤマサキ ネイルスクール学院長)

     『致知』2013年3月号
         連載「第一線で活躍する女性」より

└─────────────────────────────────┘

三菱銀行を結婚退職し、
一児の母として普通の主婦をしていました。

ところが二十六歳になる直前のこと、夜中に倒れ、
朝まで意識不明のまま。夫が起きてきて私を見つけ、
救急車で運ばれたのですが、私がそこで少し気がついたのか、
お医者様の声がかすかに耳に入ってきたんです。

「あなたはもう棺桶に足を半分突っ込んでいます。
 助かるかどうかは気力だけですね」と。

子宮外妊娠だったんですが、当時は発見が遅れて、
二人に一人は出血多量で死亡していたんです。
私は危機一髪、運よく輸血が間に合い手術も成功し、
助けていただきました。

ただその後が大変でした。

何かの瞬間ふっとお医者様の声が耳に蘇る。
すると急に体が硬直したり目まいがしたり
震えが止まらなかったりするんです。

それから二年間は病院通いの毎日でした。
いろいろな症状が出るので苦しくて心配になり、
あちこちの病院に行っては薬を貰い、
いいと言われる健康食品を買い込む。

なんの希望もなく、ほとんど家の中で
寝たり起きたりの状態でした。

     * *

ある日突然見知らぬご婦人二人が
我が家の玄関に立たれました。
そしてそれぞれの方が一枚ずつ、
白い紙をそっと玄関先に置いていかれたんです。

お二人はご近所の方々で、病気で寝込んでいる
私のことを知り、わざわざお見舞いに来てくださったんです。

紙の一枚にはこう書かれてありました。

「明日のことを思いわずらうな
 明日は明日自身が思いわずらうであろう
 今日の苦労は今日一日で十分である」。

そしてもう一枚は

「心を尽くし精神を尽くし 
 力を尽くし思いを尽 くして 
 主なるあなたの神を愛せよ 
 また自分を愛するように 
 あなたの隣人を愛せよ」。


その二つの聖句を見た時、
涙がとめどもなく溢れ出ました。
一体今日まで何をクヨクヨと思い悩んでいたのだろう。

私はただ治りたい、元気になりたいと
自分のことばかり考え、家族や周囲の人たちに
迷惑や心配をかけていたのに全く感謝もせず、
その上自分の不幸を嘆き悲しんでばかりいた。

そんな自分がとても情けなく、
恥ずかしくてたまりませんでした。

今日のことは今日生きているだけで十分なのに、
なぜ明日のことまで思い煩うのか。

今日一日精いっぱい生きなくてはいけないのに、
なぜ明日具合が悪くなったらどうしよう、
死んだらどうしようなんて考えるのか……。

私はなんて馬鹿な生き方をしてきたんだろうと
猛烈に反省しました。

当時は老婆みたいにガリガリに痩せていましたが、
こんな私だけど力いっぱい生きよう、
とにかく今自分が変わらないといけない。

そんなことを思いながら、
その場にへたり込んで号泣しました。
あの時に病気も洗い流されていったのかもしれませんね。

コメント入力欄

You must be logged in to post a comment.