「般若心経が教える智恵」
3月 28th, 2013 at 11:10
重松 昭春(意識開発フォーラム「メタワーク・ナウ」主宰) 『致知』2013年4月号 致知随想より └─────────────────────────────────┘ かつて、十年もの間、夜尿症に悩み、 中学二年生になっても治る気配のない子供の親から 相談を受けたことがあった。 特に器質的な疾患があるわけではなく、 鍼灸、漢方薬を始め、様々な治療法を試み、 宗教にも縋ってみたが、一向に効果が見られない。 そのうちどうにかなるだろうと考えているうち、 十年が経過してしまったというのである。 私は昭和三十年頃から脳力開発の研究に取り組んできたが、 器質的な疾患がなく、夜尿症が続いているケースには おおよそ次の特徴がある。 おねしょが発生する問題の根拠は消えていて、 「問題を持続させる根拠」だけが続いているのである。 ではその根拠とはなんだろうか。 こうした時、私が問題解決の糸口とするのが、般若心経である。 若い頃に教えを請うた巽直道先生は元エンジニアで、 仏教の専門家ではなかったが、その教えは 実に具体的かつ実践的なものだった。 巽先生の仏教講座を受け、自分自身の持つ思い込みから 解放された人たちが、病気や家庭不和をたちどころに 解消してしまう姿を何度も目の当たりにしてきた。 先述のおねしょを持続させている根拠とは、 親子のおねしょに対する強いとらわれと不安である。 般若心経でいえば「け礙(心身の自由を失うこと)」と 「恐怖」に支配されている状態だ。 その気持ちの表れとして、親は子供が寝る時の夜具に おねしょマットを敷いている。 また、夜半にはわざわざ子供を起こして 必ずトイレに行かせるという。 これは自律神経の働きから言っても不自然であり、 子供に心理的負担を強いることにもなってしまう。 つまりおねしょに対する母親のこだわりが強いと、 子供の意識にも深い影響を与え、 母親の不安どおりにおねしょは繰り返される。 私は彼女にそのことを理解してもらった上で、 お母さんの意識の転換がまず必要なのだと訴えた。 そして子供に対して次の宣言をしてもらうことにした。 「きょうからおねしょマットを取ります。 夜に起こして一緒にトイレに行くのもやめます。 おねしょがちゃんと治る方法を先生に教えてもらったから、 あなたはお母さんを信頼してくれさえすればそれでいいのよ」 ただ、母親としてはおねしょマットを取り、 子供を起こすのをやめたとしても不安は消え去らないだろう。 そこで私は彼女に 「本当に問題を解決したいのであれば、 どんなことでも素直に実行しますか」 と確かめた上で、般若心経の「般若波羅蜜多」の実践を勧めた。 といっても難しいお経の話をするのではなく、 次の言葉を唱え続けてくださいというだけである。 「治る、治る、治った。ありがとうございます」。 これが実は「渡った、渡った、彼岸に渡った……」という 「般若波羅蜜多」の翻案で、未だ成し得ない現象が 自分の意識の中で実現して喜びに満ち、 感謝していることを示す。 その行為を何回も繰り返してもらうのである。 本当にそんなことだけで、長年におよぶ子供のおねしょが 治るだろうかと疑問を持たれるかもしれない。 しかし実際に私のアドバイスを実行した母親により、 子供のおねしょは四日目には完全に治ってしまったのである。 私はこの後、夜尿症に悩む十組以上の親子から相談を受けたが、 いずれも数日間で問題は解決した。 他にも般若心経の教えを応用していじめ自殺を思いとどまらせた子、 勉強嫌いだった子が高三から突如猛勉強を始めて 難関大学に合格したケースなど、例を挙げていけば枚挙に遑がない。
Posted by mahoroba,
in 人生論