『安岡正篤 活学百言』から
10月 28th, 2011 at 9:22
「どんなに仕事ができても、手柄があっても、それ故に地位を与え、
禄を与えて人を支配させてはいけない人がある。
又これといって仕事のできないでも、その地位にその人を据えておれば、
自然に治まる人がある。
これを使い分けることが東洋政治哲学の人事行政の根本問題である。
これが「賞禄有功(しょうろくゆうこう)である」
「人間の言葉で案外確かなものは『酔中の言』だといわれる。
酔えば理性が麻痺(まひ)するために本当のことをいう。
しかしそれでは余りに真実で生々しいから、
約束で酔中の言はとりあげぬことにした。
古人の粋(いき)なはからいではあるが、
この酔態の中によくその人物を観ることができるものだ」
「賞禄有効」や「酔中の言」――。
これら日常の行動指針となる100の言葉が収められています。
また、
「『一燈照隅』とは、おのおのが、それぞれ一燈となって、
一隅を照らす、則ち自分が存在するその片隅を照らすこと。
(中略)
聞くだけなら愉快だが、つまらない人間も
「世界のため、人類のため」などと言います。
あれは寝言と変わらない。寝言よりももっと悪い。
なにも内容がない。
自分自身のためにも、なんて大口きけるか。
それよりも自分がおるその場を照らす。
これは絶対に必要なことで、またできることだ。
真実なことだ。片隅を照らす!
この一燈が万燈になると、「万燈遍照」になる」
といった大局的な物の見方・考え方も説かれ、奥深い内容となっています。
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編著者である安岡正泰氏は安岡師のご子息です。
本書では、ご家族だからこそ語れる貴重なエピソードとして
安岡師が戦犯に指名されかかった時の
家庭での鬼気迫る様子も「序」で描かれます。
選び抜かれた100の言葉をコンパクトにまとめた本書は
身近に置いておける座右の書、心の糧の書として、おすすめです。