「教科書に載るような研究をしろ」
木曜日, 12月 22nd, 2011
鈴木 章 (ノーベル化学賞受賞者・北大名誉教授)
&
數土 文夫 (JFEホールディングス相談役)
『致知』2012年1月号
特集「生涯修業」より
http://www.chichi.co.jp/monthly/201201_pickup.html
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數土 ブラウン先生(※)からは人格的な面での影響も受けましたか。
※ハーバート・ブラウン氏。ノーベル化学賞受賞者。
パデュー大学にて鈴木章氏、根岸英一氏を教える。
鈴木 僕は既に日本に職があって助教授だということは知っていたから、
帰国する時
「他の人には言わないが、おまえは日本で
ポジションがあるから学生を指導する方法を教える」
と教えてくれました。
まず、学生が来たら三か月間はちゃんとよく見ておけと。
別に何か注意したり、指導するとか、そういうことではなく、
その人物がきちんとやっているかどうか見ておくように。
それで、この学生は何も言わなくてもちゃんとやると分かれば、
特に何も言わずに見守っていろ。しかし、そうでない場合は、
横道に逸れないようちゃんと指導しなければならない、と。
數土 それは企業の人材育成でもまったく同じことです。
鈴木 僕自身もブラウン先生に
「ああしろ、こうしろ」と言われたことはなかったですが、
「教科書に載るような研究をしろ」ということは、
何度も繰り返し言われたことですね。
要するに誰もやっていない、新しい研究で有用な仕事をしろ、
ということです。
數土 以前、鈴木先生は
「重箱の隅をつつくような研究はするな」
と学生に指導しているとおっしゃっていましたが、
通じるものがありますね。
鈴木 プロダクティブというか独創的というか、
そういう仕事をしなさい、と。
これは僕が化学屋だから言うんじゃなくて、
独創的な仕事を目指すというのは
他の仕事でも全部同じだと思います。
商売をやっている人でも新聞をつくっている人でも、
人の後追いをしていたんじゃ、いい仕事はできないでしょう。