「ナンバー1とナンバー2の違い」
火曜日, 1月 24th, 2012
古森 重隆 (富士フイルム社長・CEO)
『致知』2012年2月号
特集「一途一心」より
──────────────────
(写真フィルムの事業から)
相当思い切った構造改革をやろうというんですから、
反対もたくさん出てくるし、
また新規分野もどこに投資するかで意見も割れます。
そこで会社の経営資源を全部洗い出し、市場を徹底分析して、
ここぞという分野を定めて投資したんです。
例えば液晶用の材料、インクジェット、化粧品、
医療機器、医薬品といった分野です。
自前でやっていては機を逸するので、
積極的にM&Aを働きかけ、
インクジェットプリンターのヘッドで
世界一の会社を買収しました。
医療のITシステムの会社や製薬会社など、
合わせて三十社近くを買い、
この十年間で六千億円くらい投資しました。
* *
何が当たるのか、読みに読んで決める。決めたらやる。
経営者として、百の判断をしたら百間違えないつもりで
私はやっています。絶対間違えないぞと。
そのためにはいろいろ情報も必要ですが、
それが全部揃うまで待っていては機を逸してしまう。
不完全な情報から本質を見極めなければならないから確かに難しい。
私も一つ、二つは間違えました。
会社の存続に関わるような問題ではありませんでしたが、
その程度で済んだのは、やはり百決めたら百間違えないという
気魄(きはく)と精魂を込めてやっているからです。
そうやって毎日仕事をしていると、
もう本当にヘトヘトになりますよ。
社長になんかなるもんじゃないなというのが実感ですね(笑)。
しかし社長になったからには
そういう姿勢で臨まなければなりません。
間違えるのが人間だと言っているようでは経営は務まらない。
昔の侍なら間違えたら腹を切らなきゃいけないわけで、
それくらい決死の覚悟でやらなければならないと思います。
だから組織のナンバー1とナンバー2の一番の違いは
責任の重さです。
ナンバー2も相応の責任は負っていますが、
まだ竹刀の勝負だと思います。
間違えてもまだ自分の後には
社長がいるという思いがどこかにある。
しかしナンバー1が間違えたら会社が傾いてしまう。
その差はとてつもなく大きいですよ。
だからナンバー1である経営者は、
いつもヒリヒリするような緊張感、恐怖感の中で
真剣勝負をしているわけです。
気魄(きはく)も違いますよね。
使命感も責任感も違う。
まぁそうならざるを得ないわけですが。
やっぱりナンバー1とナンバー2以下の
意識の差は拭いきれません。