福地 茂雄 (アサヒビール相談役)
『致知』2012年2月号
特集「一途一心」より
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「惚れられるより惚れよ」という営業哲学も、
そういう中で叩き込まれました。
私が入社した頃は恵まれていて、
特に大阪ではビール会社といえば
アサヒビールというくらい浸透していたんです。
けれどもその勲章を持って回ったらダメだと。
アサヒビールという看板を抜きにしてもお客様から信頼され、
求められるような人間になれ。
そのためにはお客様から好かれようと思ったらダメだ。
こっちから好きになることだと。
そういう大切なことを叩き込んでくれたのがブラザーでした。
ですから新人の頃にマンツーマンで仕事の基本から、
技術的なことからものの考え方から
キッチリと教える体制をつくることは非常に大切だと思います。
それから、人間は着るものに応じて太くなるものですね。
立場が人をつくるんです。
だから課長になれば課長らしくなってくるし、
支店長になれば支店長らしくなるし、
社長になれば社長らしくなってくる。
小さい服を着ていたらいつまでも大きくなりません。
一度大きめの服を着せてみたら、
結構服に合わせた人間ができてくるものです。
自分の息子やよく知っている人間に対する時ほど、
あいつはまだ若いと躊躇しがちですが、
チャンスを与えることが大事です。
初めて課長になった時に支店長から、
「君はどういう考え方で部下指導をするんだ」
と聞かれたので、
「自分のできないことは部下に求めません。
できることは徹底して求めます」
と答えたら、
「君は落第だ。
上に立つ者は自分ができないことでも
部下に求めなければならないものだ」
と言われました。