108歳の女流ピアニスト
日曜日, 3月 4th, 2012
ある方(白いグランドピアノさん)のブログのシェアです。
108歳になる奇跡の女流ピアニストのお話です。
今年108歳になるアリス・ソマーさんは、今でも生存している元ユダヤ人強制収容所の囚人の中で
最長齢であり、しかもピアニストとしても最長齢だそうです。
長生きの秘訣は?との問いに、「楽観的な性格」だと述べています。
プラハに住んでいたアリスの一家は、ユダヤ人の強制収容が始まってから、
当初2年間はプラハのゲットーで過ごし、
その後チェコに作られたテレージエンシュタットという収容所に送られたそうです。
この収容所は、ナチスが諸外国に対して
「収容所は快適であり、中にいるユダヤ人は幸せに暮らしている」と見せるための、
いわゆる「やらせ収容所」的な場所だったそうで、
文化・教養があり、社会的に高い地位にあったユダヤ人が多く送られたといいます。
アリスはその収容所内に作られた楽団に入ったそうです。
そこでは暗譜でショパンのエチュード24曲を演奏したこともあったといいます。
楽団がある、と聞くとなんだか優遇されているように思うかもしれませんが、
実際には他の収容所と同様に生活は過酷で、毎日が飢えとの戦いでした。
彼女はこう語っています。
「食事はほとんど与えられませんでした。体重はすっかり落ちました。
周りで餓死する人が絶えない中、捨てられたジャガイモの皮を拾って飢えをしのぎました。
そんな状態でどうやって音楽なんか演奏できたの?と聞かれます。とにかく体力が弱っていましたから。でも音楽は特別で、魔法をかける力があったのです。私にとって音楽は食べ物でした。」
彼女の他にもこの収容所のオーケストラには優秀なチェリスト、バイオリニスト、
指揮者、作曲家などがいたといいますが、彼らにとっても音楽は食べ物だったのかもしれません。
アリスには6歳になる息子がいましたが、赤十字が視察にきたときに、
視察団の前で歌を歌わされたといいます。
視察の直前に、建物の外壁を塗り直したり、公園を作ったりと、
ナチスは収容所の悪環境がバレないようにいろいろと工作したようで、
子供の歌もその一環だった模様です。
ただ、実際にはこの収容所に来た1万5千人の子供のうち、
生き残ったのはたったの130人しかいなかったほどの過酷な環境だったのですが・・・・
アリスの夫は有名なバイオリニストでしたが、アウシュビッツへ送られ、
その後別の収容所で死亡しています。母親もやはり収容所で死亡しています。
ひどい目にあって母や夫まで殺された彼女ですが、ナチスを憎むことは一切ない、と言います。
憎しみの感情は、憎まれる対象ではなく、憎しみを抱く方の魂を蝕むからだと。
長生きの秘訣は、このあたりにあるのかもしれません。
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