まほろばblog

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不便だけど不幸でない

金曜日, 3月 9th, 2012

言葉は要りません。
ただ観て下さい。

アルバム ライナーノートから

 人生の途中で乳がんになり、夫が悪性リンパ腫と闘った知人の女性が、「不運だけど不幸じゃない」と言った。生まれながらにして手足のない先天性四肢欠損症の佐野有美さんは、「不便だけど不幸じゃない」と微笑む。与えられた状況を受け入れながら前進する人の言葉はズシリとくる。私たちは五感(視聴嗅味触)を生ずる五つの感覚器官の五官識の世界にいる。有美さんはそれを超えた六識の世界を持っている。私たちには見えない、感じられない力を四肢の代わりに持っている。
それは幼いころからの母親の厳しい訓練で得たのか、諦めない不断の努力によって培われたものなのか…。

小学校の校長先生は、「あみちゃんが何事にも一生懸命に取り組んでいる姿を見て、ラクをしよう、ズルをしようという子がいなくなりました。あみちゃんの頑張りや前向きな姿勢が刺激になって、ほかのたくさんの子を変えていきました」と母親に告げた。人を変える力を持っているのだ。
本人は、「もし悩んでいる人がいたら、私には手がないけど、心の手を差し伸べたい。わたしには足がないけれど、真っ先に駆けつけてそばにいてあげたい」と思っている。

アルバム『あきらめないで』は、「誰にでもやさしくなりたい」という、有美さんの、「心に寄り添いたい」というメッセージである。聴き進むにつれ、ドキドキしてくる。私たちは抱きしめたり、走ったりできるが “ココロの欠損症” なのではないのかと。

「心底笑っているか?」「本当に見えているか?」「チャレンジしているか?」と自問せざるを得ない。
2011年3月11日、私たちは普通であることの大切さに改めて気付いた。立ち止まって矜持や忍耐、互恵について考えたり、己を省みた人も多いだろう。
歩み続けてきたから今日があり、今を一生懸命に生きるから明日がある。そういう時代が生んだアルバムであることは確かだ。