「お客様が先、利益は後」
火曜日, 4月 17th, 2012 『致知』2012年3月号
特集「常に前進」より──────────────────────────────────
MKタクシー創業者の青木定雄オーナーとの出会いです。
創業して1、2か月たった頃、友人から
凄いタクシー会社があると聞いてビックリしまして、
アポイントも取らずに夜行列車を乗り継いで京都に行ったんです。
京都駅からMKタクシーに乗って本社まで伺ったんですが、
早速驚いたのが、助手席の安全枕に
「お客様へのお願い」とありましてね、
次の4つを怠った乗務員には運賃を払わないでくださいとあるんです。
・「ありがとうございます」と挨拶をします。
・「MKの○○です」と社員名を明らかにします。
・「どちらまでですか」と行き先を確認します。
・「ありがとうございました。お忘れ物はございませんか」
とお礼を言います。
感服しながら本社に着いたのですが、
やはりオーナーはご不在で翌朝3、40分なら時間を取れると。
その日は市内で何度もMKの車に乗り、
行き届いたサービスにつくづく感服しました。
翌朝お会いするとオーナーは開口一番
「君、年はいくつだ?」と聞かれました。
28歳で、まだ10台しか車を持っていないと申し上げると、
「そうか、実は私も32歳で始めた時はやっぱり10台だったんだ」
とたちまち話が弾んで、3、40分の面会予定が
3、4時間になったんです(笑)。
以来30年、青木オーナーを師匠と思い定めて
毎月のように通い詰め、頑張れ、頑張れと
励まし続けていただきました。
その青木オーナーからある時、
今度こんなことをやるんだと紹介されたのが
空港便だったのです。
数人乗りのジャンボタクシーで
お客様をご自宅から空港までお送りするサービスで、
素晴らしい業績を上げている。
ぜひ君もやりなさいと。
ところが地元の松本空港では便数、乗車率ともに
低くてとても採算が合わない。
諦めかけたところでパッと浮かんだのが、
成田空港だったんです。
すぐに長野から成田まで走ってみると、3時間半で着きました。
これならいけるということで、価格を
JRより安い8500円に設定し、24時間受付、
1名様からでもお送りするということで立ち上げたんです。
【記者:1名でも採算は合うのですか?】
1名の時は難しくても、トータルでは利益が上がるのです。
けれども当初はほとんど引き合いがなく、
やればやるほど赤字が積み上がりました。
3、4か月も続くと、やめたほうがいいかなと迷い始めたんです。
そんな時に出合ったのが宅急便の生みの親・ヤマト運輸の
小倉昌男さんの本でした。
宅急便も最初は5年間も赤字が続いたそうです。
しかし、それでも必ず逆転をすると信念を貫いて、
ついに翌日配送のシステムを確立したとのことでした。
その話に意を強くして、もう少し粘ってみようと思い直したわけです。
その小倉さんが赤字の時に言い続けたのが、
「サービスが先で利益は後」
ということでした。
それに感動して当社も
「お客様が先、利益は後」
という理念を掲げるようになったのです。
おかげさまで空港便は半年後に黒字転換し、
いまでは毎日35台、ハイシーズンには
45台くらい走らせています。
ご注文数では1日350件にも上ります。
新潟エリアにも1日70台くらい走らせ、
空港便は売り上げの6割を占める事業の柱になりました。