吉田秀和さんご逝去
月曜日, 5月 28th, 2012毎週日曜日のNHKFMに流れる吉田秀和さんの「名曲の楽しみ」が、これからは聴けない。
あのような格調が高く、しかも肩の凝らない話しぶりの人は、もう出まい。
吉田秀和さんが98歳のご高齢でお亡くなりになった。
私が吉田さんを知ったのは17,8だから40年も昔の話で、吉田さんが私位の年格好だった。
まだ、武満徹がそれほど有名でなかった頃、遠山一行さんが批判し、吉田さんが評価していた。
「20世紀音楽研究所」を柴田南雄さんたちと立ち上げころで、
私は盛んにウェーベルンなどの十二音音楽の前衛を熱心に聴いていた。
新進の音楽家を育てると共に、古典の演奏に対しての地味深い評論は、
決まり文句の評論語でない、肩の力の抜けた、しかもインテリジェンスの富んだ語句に、
深いヨーロッパ文化の香りと奥行を感じたものだった。
若い頃、中原中也や小林秀雄らとの交流が、真贋を見分ける眼に磨きをかけただろう。
それと、温かい人間を見る目を通した語り口に、息の長さが感じられた。
それが長寿にも通じたに違いない。
そして、先日も、バリトン歌手、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ氏(86)の訃報が届いた。
こうして国内外の巨星逝くの報が、一層寂しさを募らせる。
次第に青春の1ページが虚空に消えてゆく。