眞鍋政義 (全日本女子バレーボールチーム監督)
『致知』2011年9月号
特集「生気湧出」より
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いろいろなチームを渡り歩いてきた経験から思うのですが、
強いチームと弱いチームの差というものがやはりありましてね。
例えば、試合前のミーティングで
監督の思いが一方通行になっている。
「こうしろ、ああしろ」と言われて選手たちが
「はいはい」と言っているだけ。
こういうチームはやはり勝てません。
反対に選手が自分たちの問題点を自分たちで考えて分析し、
スタッフと思いを同じくして
試合をしているチームは強いですね。
私がコミュニケーションを重視し、
選手にいろいろな提案を求め、耳を傾けるのはそのためなんです。
私は監督で立場的には一番上です。
だけど一方通行にならないよう、
できるだけ選手と目線を同じくして、
選手がこの練習メニューで本当に満足しているか、
困っていることはないかなどを聞いて、
一番実力を発揮できる環境を整えてあげたいと思っています。
【記者:コミュニケーションの成果は
どのような時に感じられますか?】
ゲームの後、スタッフたちがそれぞれの選手の
ゲーム中のスパイク、ブロック、サーブの数値を
パソコンで打ち出します。
一昨年まで、スタッフの部屋に自分のデータを
取りに行って勉強し、反省しようとする選手は
ほんの数人にすぎませんでした。
ところが、昨年から自分の成績に関心を持つ選手が増えて
頻繁にスタッフの部屋に行っては映像を見て、
自分で分析するようになったんですね。
私はこの差は大きいと思います。
自分たちで考えるようになったご褒美が
世界選手権の銅メダルだと思うくらいです。
コミュニケーションに関して申し上げれば、
選手やスタッフの中でチームみんなで
戦ったという意識がとても高まりました。
濱口華菜里という選手がいるんですね。
レシーブに天性の才能を持っている世界選手権のメンバーです。
明るい性格で、いつも大きな声で皆を
励ましてくれるし練習にも人一倍熱心。
人の嫌がる片づけも率先してやってくれます。
だけど、私はこの濱口を選手権に
出場させてあげられなかったんです。
世界選手権もW杯も14名登録で、出場できるのは12名。
濱口が務めるリベロの控えはなかなか出る機会がない。
本当に悔しかったと思います。
だけどそれでも濱口のファイトは最後まで変わりませんでした。
練習には早く来てムードを盛り上げて、雑用で走り回って……。
メダルを獲得できたのは、
この濱口の姿勢が周りに伝わったからだと私は思っています。
銅メダル獲得が決まった試合の直後、
セッターの竹下佳江はすぐに濱口に駆け寄り、抱き合ってました。
その後のインタビューでも竹下は毎回のように
「出られない選手がいるから、その選手の分まで頑張りました」
と語っていましたが、これには私自身
本当に勉強させられましたね。
控えの13番目、14番目にどんな選手を置くかで
チーム力は強くもなるし弱くもなる。
その難しさを昨年私は実感したんです。
おかげで全員が同じ方向を向いて目標を共有できており、
強いチームに変わってきたことを実感しています。
【記者:火の鳥NIPPONの活躍を通して感じるのは、
日本が独自の力を発揮できれば、
この国はもっと元気になるということです】
そう思うし、ぜひそうあってほしいですね。
精密力はやはり日本人の強みなわけですから。
強みを伸ばすことで弱みが克服でき、生気が湧くはずです。
精密力が高まれば全体力が
必ずアップすることを私は確信しています。
それを実証する上でも、
誰より私たち全日本女子が11月のW杯、
来年のロンドン五輪で栄冠を手にすることで
日本を元気づけなくてはならないと思っているんです。
昨年の世界選手権以降、
選手もスタッフも目の色が違います。
生気が漲ってきた。
必ずやってみせますよ。
期待していてください。