創業663年の歴史を持つ
塩瀬総本家の家訓
『致知』2012年10月号
特集「心を高める 運命を伸ばす」より
http://www.chichi.co.jp/monthly/201210_pickup.html#pick4
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【今日一日の事】
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一、今日一日三ツ君父師の御恩を忘れず不足を云ふまじき事
一、今日一日決して腹を立つまじき事
一、今日一日人の悪しきを云はず我善きを云ふまじき事
一、今日一日虚言を云はず無理なることをすまじき事
一、今日一日の存命をよろこんで家業大切につとむべき事
右は唯今日一日慎みに候。
翌日ありと油断をなさず、
忠孝を今日いち日と励みつとめよ。
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【崋山先生の商人に与へたる教訓】
(渡辺崋山の遺訓を教訓として家訓としたもの)
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一、先づ朝は召仕より早く起きよ
一、十両の客より百匁の客を大切にせよ
一、買人が気に入らず返しに来たら売る時よりも丁寧にせよ
一、繁盛するに従つて益々倹約せよ
一、小遣は一文よりしるせ
一、開店の時を忘るな
一、同商売が近所にできたら懇意を厚くし互に励めよ
一、出店を開ひたら三ヶ年食料を送れ
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私どもにも代々守り継がれてきた家訓がありましてね。
それが「今日一日の事」と「崋山先生の商人に与へたる教訓」です。
いずれも31代の渡辺利一が以前より聞かされていた
渡辺崋山先生の遺訓を教訓とし、家訓としたものです。
どの教えも老舗の暖簾に安住せず、
常に我欲を捨て商いにのみ専心せよと説いたもので、
いま読んでも商人としての心得が通じていることを感じます。
特に「繁盛するに従つて益々倹約せよ」は、
母がしょっちゅう申していた
「いい時はいいように、
悪い時は悪いように暮らしていけばいい」
という言葉にも通じます。
悪い時は慎ましくそれなりに暮らしていく。
自分の代に沈むことがあっても、
必ず後に浮く時がくるのが世の常なのだと。
だから物事は長いスパンで考えることですね。
逆に「いい時はいいようにやっていく」のも大切で、
沈む時に備えてものを蓄えておきなさい、ということでしょう。
まさに「繁盛するに従つて益々倹約せよ」です。
仏教に「無常」という言葉がありますが、
やはり世の中はいつも同じであるわけがない。
だから調子がよくても驕らず、
沈んでも必ず浮く時が来るという信念を持って
取り組むことが商売をやっていく上で大事なことですね。