中里 良一(中里スプリング製作所社長)
『致知』2013年5月号
特集「知好楽」より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【記者:こちらの部屋に入って驚きました。
ロボットや動物など素敵なオブジェが溢れていますね】
これを見た人から「何やってる会社なの?」って
よく言われます(笑)。
うちは家庭用品や自動車、パソコン、医療機器など、
様々な分野で使われるばねの製造が主な事業ですが、
大事にしているのは「遊・機・質」なんです。
ここにあるのは「遊」、遊び心に基づくもので、
すべてうちの社員がご褒美制度でつくった製品です。
一年間で一番頑張った社員に与えるご褒美があるんですよ。
一つは、作業時間内に会社にある設備を好きなだけ使って、
好きなものをつくっていいという権利を与える。
それがこういうワイヤーアートとかモニュメント。
もう一つは、うちは取引先をすべて社員の希望制で担当するんですが、
どうしても好きになれない人っているでしょう?
そのお客様との取引を切っていいという権利を与えるんです。
驚かれるかもしれませんが、うちとよそ様の一番の違い、
それは判断基準です。多くの人は判断基準が損得なんです。
だけど日本語はすべて言葉の最初に戻るというのが私の持論で、
損得勘定でやったことは必ず損をするようにできている。
うちはすべての判断基準が好き嫌いです。
これって一番曖昧なようで本能的なセンサーだから狂わない。
よく、好き嫌いなんかで仕事はできないって
言う人がいるんですけど、私はこう言うんです。
「皆さんは好きな学校へ行ったでしょう?
好きなクラブ活動をして、好きな会社に入って、
好きな人と結婚するはずなのに、
なんで仕事だけ損得で考えるの」
って。学生の時に成績優秀だった人は勉強が
好きだったから頭がいいって言われたんですね。
簡単です。
社会に出たら自分の仕事を好きになればいい。
うちにはそのための工夫がたくさんありますが、
ご褒美制度はその一つ。
だから目指しているのは
日本一楽しい会社をつくることなんです。
町工場や中小企業では、社長と社員が使ってやっている、
働いてやっているという関係だったらダメになってしまう。
うちはお互いがファンクラブ。
私は社員のことが大好きだし、社員も私を好いてくれている。
だから相手のために頑張れるんです。
働くという字は、人が動くと書きますよね。
でも、人ってなかなか動かない。
なぜなら動くには重い力が加わるから。
働くっていうのは傍を楽にさせることですよ。
自分がしてほしいと思ったことを先に相手にする。
そうするとツキも手元にやってくるんです。