まほろばblog

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「笑顔は最高の教養」

月曜日, 4月 22nd, 2013
   小菅 美惠子(笑顔塾社長)

              『致知』2013年5月号
               致知随想より

└─────────────────────────────────┘

小さい頃、手相を見てもらった時、
「あなたは長生きをしますよ」と言われました。
しかし、どうやらこの見立ては当たらないようです。
いま、私は末期がんに侵されています。

一昨年、大腸がんの摘出手術を行った際、
お医者様には「余命三か月から六か月」と宣告を受けました。
それから今年五月で丸二年。

科学的な見地から言えば、いま私は
「余命ゼロ時間」を生きていることになるでしょう。

もちろん最初は驚き、なんでこんなことにと嘆きました。
しかし、これまでの人生を振り返ると、
二度の結婚と離婚、五十歳でのリストラと起業、
そしてがん……。

人よりちょっと波瀾万丈ですが、様々な人と出会い、
ご縁をいただき支えられ、きょうまで本当に楽しく生きてきました。

その代償ではないですが、病も含めてそれが自分の人生ならば、
すべてを受け入れよう。いま、私はそんな心境なのです。

四十代後半、某研修会社の札幌支店に営業職で採用されました。
子供も中学に入ったばかり。

これから最低六年間は女手一つで育てていかなければならない
という意気込みでの入社でした。

ところが、五十歳でまさかのリストラ……。
ショックで涙も出ませんでした。

しかし、生活がかかっています。
事態を知り、声をかけてくださった企業で
半年ほど営業の仕事をしましたが、
支社長との考え方が合わず退社。

かくなる上は自分でやるしかないと覚悟を決めました。

幸い営業時代に多くの企業様を訪問させていただいたご縁で、
「うちの社員を教育してくれないだろうか」との
ご依頼をいただきました。

札幌市内の小さなお店で、対象は二人の若い女子社員。
始業前の八時から九時までの一時間を週三日、
挨拶や言葉遣い、歩き方など、基本的な態度教育を行いました。

しばらくすると、二人から少しずつ変化が見え始め、
感想文を書いてもらうとその意識の変わりようは明らかでした。
私は単純に彼女たちの成長が嬉しかったのです。

感想文を鞄に入れて持ち歩き、
たまたま知人とお茶を飲んでいた時、
「いま、研修をやっているんだけれどね」と、
彼女たちの感想文を渡しました。

目を通した知人は、それならうちも研修を頼みたい、
というのです。

その方は事務機の販売会社の社長の奥様で、
専務のお立場でした。

電話応対などは外部の一日研修などに参加させても、
数日後には元に戻ってしまう。
身につくまで研修をしてくれないかと言うのです。

研修は朝七時から八時まで、
週一回の一時間。基本態度の研修と並行して、
日常業務では電話機の前に鏡を置き、
受話器を取る前に笑顔をつくってから
応対するよう指導しました。

確かに電話の向こう側に笑顔は見えません。
しかし、必ずその雰囲気は伝わると思ったのです。

するとどうでしょう。お客様と電話でやり取りするうちに
「そういえばこの商品も必要だった」と
プラスアルファの商品の受注が増え、
売り上げが増大したといいます。

大変感謝され、お取り引き先企業を紹介していただくなどして、
次第に仕事は軌道に乗っていきました。

そして会社を起こす時、私の中にあったキーワードは、
やはり「笑顔」でした。

北海道は長く不況が続いています。
いま日本で一番笑顔が必要なのは道産子。
つらい時こそ笑顔で行動しましょうという思いを込め、
社名を「笑顔塾」としました。

ちょうどその頃だったと思います。
解剖学者の養老孟司先生の講演を聞く機会がありましたが、
先生は「教養とは相手の心が分かる心」とおっしゃいました。
あんなに頭のいい方が教養とは知識ではなく、
慮りの心だと言います。

そして私は、ならば笑顔こそが最高の教養だと思ったのです。