まほろばblog

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「凡人が勝つ唯一の道」

木曜日, 10月 10th, 2013
菊原 智明(営業サポート・コンサルティング社長)

                『致知』2013年11月号 
                     「致知随想」より

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人生とは不思議なものです。

私は大学卒業後、七年間クビ寸前の
ダメ営業マンをしていました。

ところが、そこから一転して四年連続トップ営業。

2006年に営業サポート・コンサルティング
という会社を立ち上げ、大企業の営業研修や
全国初となる大学での営業の授業を行っています。

まさか自分が他人様に何かを教える立場になるとは、
思ってもみませんでした。

そもそも私が営業の道に進んだのは、
友人の父親が車の営業をしており、
その自由奔放な姿に憧れたことがきっかけでした。

ある時、トヨタに面接を受けに行くと
「月に五台売ってください」。

一方、

「うちは住宅もやっていて、
  そっちは四か月に一戸売れればいい」

とのこと。それならできるかもしれない。
そう思い、トヨタホームに入社しました。

ただ、よく考えてみれば、トヨタ車は人気が高く、
店で待っていてもお客様が来てくださるのに対し、
トヨタホームを買いたいというファンは少ない。

大手メーカーがひしめき合う住宅業界にあっては

「○○会社もいいけど、菊原さんが素晴らしい方なので
  トヨタホームにします」

と、お客様から思っていただかなければ売れないのです。
しかし、当時の私にそのような人間的魅力はありません。

電話をしても

「ちょうど子供が寝たところになんで電話してくるんだ!」

と怒鳴られ、訪問しても

「資料だったらポストに入れてもらえますか」

と言ってTVドアフォンを切られてしまう。
会社に戻れば「またアポ取れなかったな」と散々叱られる。

半年もゼロで、俺って存在価値あるのかな……。
周りからすべて否定され、
次第に自分で自分を責めるようになってしまいました。

そんな中、私の支えとなっていたのが週末の飲み会でした。

そこに集まるのは、売れない同期や後輩たち。

結果の出ない者同士で酒を飲むことで、
現実から目を逸らし、ストレスを発散していたわけです。

その当時は、朝九時に朝礼が始まり、
毎日夜中の十二時まで帰れない、
まさに地獄のような日々でした。

それに耐え切れずに辞めていく社員も数多くいました。

彼らが手放したお客様をフォローしたり、
大手が相手にしないクレーマーのような
お客様から契約をいただいて、
年間三棟の最低ノルマをどうにか達成する。

そんなギリギリの生活が七年も続き、
気づけば二十九歳になっていました。

それまでは

「別に売れないけど、仲間がいるし、
 飲んで忘れてしまえばいいや」

と思っていたものの、三十を目前に控えた頃から
飲み会が徐々に楽しくなくなっていきました。

ある時、いつものように飲んでいると、

「いま確かに楽しいかもしれない。
 でも、おまえってダメな人間だよな」

と、もう一人の自分が囁くように感じたのです。
本当は仕事で結果を出したいという思いが、
心の叫びとして聞こえてきたのでしょう。

しかし、七年やってダメな人間が八年目から
爆発するという話は聞いた例がありません。

ちょうどその頃、結婚したこともあり、
家を建てて転職しようと考えました。

せっかく家を建てるのならば、失敗したくない。
そう思い、様々な情報を集めていると、
ある資料が目に飛び込んできました。

「もう少しコンセントを増やしておけばよかった」

「濃い床にしたら傷や埃が目立つ」

等々、そこには実際に家を建てたお客様が
後悔した事例がたくさん載っていたのです。

「これは面白い! きっとお客様にも喜んでいただける」

私はすぐに“お役立ち情報”として、
そのリストをお客様に郵送しました。

するとどうでしょう。

「いくつか見積もりを出したんだけど、
 ちょっとよく分からないので相談に乗ってくれませんか」

「とりあえず菊原さんにお願いしますよ」

というお客様が現れたのです。

営業の仕事が面白いと、
心の底から感じられた初めての瞬間でした。