福島孝徳(デューク大学教授)
※『致知』2014年2月号
特集「一意専心」より
※対談のお相手は、福島氏の盟友であり、
世界最先端の医療機器を導入し、
福島・宮城・青森・東京・神奈川を基盤に
16もの病院を経営する
南東北グループ総長・渡邉一夫氏です。
福島 私は若い時からとにかく、
日本一、世界一になりたかった。
そのためには普通のことをやっていたらダメなんで、
「人の二倍働く」「人の三倍努力する」
という方針でやってきました。
普通の人が寝ている間、休んでいる間に差をつけると。
そういう姿勢で若い頃から腕を磨いてきたんですけど、
いま71歳になってみると、人生は短い。
私に残された時間はもう少ない。
だから、一刻も無駄にできないんです。
渡邉 いまは年間どのくらい手術をされているんですか?
福島 600回ですね。
一番の盛りは三井記念病院にいた43歳の時で、
900回はやっていました。
私は人間の年齢には暦の上の年齢と、
生理学的な年齢の二つがあると思っているんです。
私が本当に感心するのは、
経団連の会長をされていた土光敏夫さん。
80を過ぎても矍鑠(かくしゃく)としていましたよね。
素晴らしい人でした。
で、いま世界でも、
例えばモスクワの国立ブルデンコ脳神経センター
というところは脳外科だけで2000床もあるんですが、
ここの総帥がコノバロフという人で
83歳のいまも毎日手術をしている。
渡邉 ああ、そうでしたか。それは凄い。
福島 それからローマ大学のカントーレという教授、
彼もいま83ですけど、手術をしています。
私自身、手術に関しては
いまだにマスターチャンピオンですよ。
目と手は全然若い人に負けない。
だからあと10年は大丈夫じゃないかなと思っています。
これにはやっぱり天性の才能が
少なからずあると思うんですけど、
それ以上に膨大な数をやっています。
だから、私はいつも言うんですけどね、
人生は一に努力、二に努力、三に努力、全部努力なんですよ。
他の人が信じられないような努力をして、経験を積む。
それから本当はいいコーチがいなきゃいけない。
オリンピック選手を見ていても、
皆が類い稀な技量を備えている中で
どこに差が生まれるか。
コーチですよ。
渡邉 なるほど。でも、福島先生にコーチはいないでしょう?
福島 いや、私は若い頃、ちょっと暇があれば、
世界中の名医を訪ねて回りましたから。
いまでもそうです。毎日勉強しています。
あの天才ミケランジェロが残した
有名な言葉が「ラーニングアゲイン」。
ルネサンス期に世界一の絵と彫刻を生み出していても、
いまだに日に日に勉強しています、と言った。
だから日に日に勉強して、日に日に努力して、
渡邉先生も同じだと思うんだけど、毎日仕事しています。
休んでいられないですよ。
私は土日と祭日も一切休まない。
夏休み、冬休み、一切取らない。
毎日働くのが趣味なんです。
* * *
福島氏はいかにして世界一のドクターとなったのか。
その不遇の修業時代とは。
大切にしている信条とは。