杉本文楽 『曽根崎心中』
火曜日, 12月 23rd, 2014
先日の浄瑠璃の縁繋がりなど、目に見えない網目から零れて来るような気がする。
札幌での「曽根崎心中」のことを、それも東京講演に聴きにいらした
画僧の高杉嵯知尼にお話しすると、今度はあの世界的写真家・杉本博司氏の
プロデュース『杉本文楽』・・・「曽根崎心中」・・・の経緯を語ってくださった。
杉本さんをサポートし、高杉さんと親しくされている足立寛プロデューサーから、
そのDVDを贈ってくださったのだ。
それが、これである。
これは、NHKドキュメントで放映された「この世の名残、夜も名残」で、
実に見応えがあり、深く感銘した次第。
その概要が、下のHP上にある。
http://sugimotobunraku.akanekuribayashi.com/index.html
近松門左衛門の原文を一字一句違えずに、従来の演目とは別に
新たに国宝・鶴沢清治師が作曲したもの。
七五調から外れた字余り字足らずの音韻が、よりリアリティを醸し出す。
新しい創意と手法が加えられて、観る者をして古き文楽が、
現代人に新しい演劇として新生したという印象が与えられた。
それほど、一大センセーショナルな仕立てだったのだ。
三人使いを、近松の江戸期当時の一人使いにしたり、
前の手すりを外して、全容の姿態を見せる。
そこに、国宝吉田蓑助、桐竹勘十郎が様式を越えて、
さらなる人形浄瑠璃の可能性に応じる心意気。
例えば、従来の横動きのみの使いを、奥行きが何倍もある長さで、
全人格的な立体感のある人形の動きが求められる。
観音寺巡りや最期の道行きを、縦横に歩かせる。
この無理難題とも言える発想に、見事に応えられた。
これは出演者や観劇者をして、ドキモを抜かせただろうこと。
重なる太棹や太夫の合弾き合奏は壮観。
しかも、視覚的に座の配置も絶妙。
無垢の白木、古様にして新式の鳥居が、象徴的に舞台中央に設えられ、
そこに、白洲正子さん譲りの本物の鎌倉期十一面観音を屹立させる演出。
徹底して照明を落として闇夜を作り、
漆黒の舞台に、お初と徳兵衛の白衣が浮かび上がる。