それは僕が好きな宮澤賢治にちょっと似ています。賢治は厳しい現実である生活、労働と、自身の内面生活や理想を矛盾させることなく、同一視しているように私には思えます。農業と芸術、現実と理想、それらを全く反対に位置付けるのではなく、同じ所から発生したもの、そう捉えているように感じます。
正木さんは若い頃、世界を旅し、特にインドを遍歴して様々な哲学、文化に触れて、色んな体験をしてきたそうです。その中で築き上げられてきた、自然に対する感謝と、それによってもたらされた価値観に共感し、集まってくる人が大勢いるそうです。あの歌手のUAさんもその一人です。
奥さんのチコさんも、娘さんのラビさんも、皆さんすごく感受性が豊かです(僕が訪ねた時はチコさんしか居ませんでしたが)。
僕が帰る時、チコさんが歌を歌ってくれました。
アンナプルナのお茶を飲みながら、木の椅子に深く腰掛け、リラックスしながら僕だけの為のコンサートに耳を傾けました。優しく、角の無いチコさんの声と、そのとてもシンプルな歌詞とメロディを聴いていると、その空間がまどろみ、そこに安らかな時間が現われ、すごく癒されました。
というか寝そうになりました。
アンナプルナはサンスクリット語で「豊饒の女神」という意味です。
その大きな母性に抱かれたような安心感を、このシンプルな歌は孕んでいました。母性は自然そのものであり、万物を内包するそれの、愛を歌っているように感じました。
|