「ありがとうございます!! 社長も専務も喜びます!」
"わぁ〜全部買ってくれたぁ!"
私はとっても嬉しかった。
お客様がまほろば農園のリーフレタスを6袋買って下さったのだ。
値段は2玉で290円。
その日、まほろば農園からリーフレタスが入荷してきた。
3玉で290円。
専務の字で書かれた紙がリーフレタスと一緒に入っていた 。
とっても小さくて、290円ではとても売れそうになかった。
店には、未だに売れ残っているリーフレタス達がいる。
今回のよりは大きくて、2玉で280円、しかも2割引きシールが貼られている。
私は値付けするのを躊躇した。
"きっと今年最後の収穫なのだろう。でもこの値段じゃ…"
一緒に働いている従業員に声をかけた。
「この値段で売れるかな?」「いや〜難しいよね」…。
私は店長に相談した、店長も渋い顔。
まほろばでは、専務からの指示は絶対だ!
でも野菜が売れ残ってしまっては意味がない。
店長にも値下げの許可をもらい、190円でいこうということになった。
私は社長室へ向かった。
店にいるリーフ(2割引き)と今日来た小さいリーフを持って。
「社長、このリーフレタス、この値段ではきっと売れないと思います。この子のように2割引きでも売れないのではかわいそうです。」
社長は悲しそうな顔をした。
「そうだな〜かわいそうだよな。」
とても迷っていたが、
「198円か?」と。
「はい、それなら売れると思います。」
悲しかったけど、198円で値付けし、目立つように、冷蔵庫とは別の場所の竹の籠の中に並べた。
店前の従業員にも声をかけて、手書きのポップを書いてもらい、願をかけた。
発送のお客様にも声をかけたりして、リーフレタスを買って頂き、店のは完売!"やったぁ!" でもまだ1箱ある。
今から野菜を並べるには遅い時間だったが、急いで袋詰めをした。私はその時、専務のことを想った。
そうしたら、値段を専務の指示に従おうと思い直した。
最初のよりはサイズが大きくて、2玉で290円。
"よし、売ろう!"そう決心した。その日は全部売れなかった。
その日の夜、2割引で古くなったリーフレタスを食べた。
きれいに洗って、まずはそのままむしゃむしゃ……
"んんん?おいしい。"
私は心からそう思った。
優しい甘さ、苦みやアクが全くない。
芯は特に甘かった。カラダに沁み渡るような透明感のある味。
"専務の味だ。"
私はそう思った。
塩麹に漬けたお肉と野菜を焼いて、リーフと一緒に食べた。
シンプルだけど、絶妙な組み合わせ。
幸せ。"あぁ〜、専務に悪いことをしてしまったな。" |